ハッブル望遠鏡が重力レンズで115億年前の超新星爆発を観測 | アストロピクス

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ハッブル望遠鏡が重力レンズで115億年前の超新星爆発を観測

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団Abell 370。Image Credit: NASA, ESA, and J. Lotz and the HFF Team (STScI)
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団Abell 370。Image Credit: NASA, ESA, and J. Lotz and the HFF Team (STScI)

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団Abell 370のアーカイブ画像から、遠方銀河で115億年前に発生した超新星爆発が発見されました。Abell 370は、くじら座の方向、約42億光年の距離にある銀河団です。銀河団の巨大な重力がもたらす「重力レンズ効果」が、今回の発見に重要な役割を果たしました。

重力レンズとは、天体の重力によって光が曲がったり増光したりする現象です。銀河団よりはるか遠方で発生した、星の死にともなう巨大な爆発現象である超新星爆発の光が、銀河団Abell 370の巨大な重力によって曲がり地球に到達したのです。

ハッブル望遠鏡が2010年12月に撮影した画像には、超新星爆発の光が3つの像に分裂して映っていました。それぞれの像の光は異なる経路を通って地球に到達したもので、各経路の長さが異なるため到達時刻には時間差が生じます。モデルによる計算から、それぞれ数日の時間差で到達していたことがわかりました。

時間差を利用して超新星の明るさの時間変化が導き出され、その時間変化から爆発初期の超新星をとらえていたことが判明しました。また明るさと色の時間変化から、爆発前の星は半径が太陽の約500倍(約3億5000万km)と推定される赤色巨星であることも分かりました。

研究チームは今後、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの観測データから、さらに遠方の超新星爆発を調べる予定とのことです。

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ハッブル望遠鏡が撮影した115億年前の超新星爆発の画像

この画像は、銀河団Abell 370と今回発見された超新星をとらえたハッブル望遠鏡の画像です。

左はAbell 370の画像で、白枠が右の4枚の画像の範囲を示しています。Aは2011〜16年にかけてのハッブル望遠鏡の画像を合成したもので、超新星が消えたあとの銀河を示しています。Bは2010年12月に撮影されたハッブル望遠鏡の画像で、銀河とともに時間経過の異なる3段階の超新星が映っています。

Cは、AからBを差し引いた画像(差分画像)で、明るさの異なる3つの超新星の像が見えています。Dは複数のフィルタで同様の処理を行い合成したもので、冷えつつある超新星が異なる色で映っています。

Credit: SCIENCE: NASA, ESA, STScI, Wenlei Chen (UMN), Patrick Kelly (UMN), Hubble Frontier Fields

参考記事:重力レンズで遠方銀河の像を歪める銀河団Abell 370

(参照)Hubblesite千葉大学