天の川銀河の中に、これまで知られていなかった構造が新たに発見されました。若い星と星雲からなる3000光年ほどの長さの構造が、天の川銀河の渦状腕の一つである「いて腕」から突き出しているのが見つかったのです。
上の画像の背景は天の川銀河の想像図で、白枠内を拡大し模式的に描いた図が右上に置かれています。「いて腕(Sagittarius Arm)」に交差するように描かれているオレンジ色の「★」の集まりが、今回発見された構造です。それぞれの「★」は、数十〜数千個の星が存在する可能性のある星形成領域を示しています。
研究チームは運用終了(2020年1月)前のスピッツァー宇宙望遠鏡を使い、ガスと塵の雲(星雲)に埋もれている新たに生まれた星を探しました。スピッツァー宇宙望遠鏡が観測に利用する赤外線は星雲を通り抜けるため、可視光ではガスと塵に隠れて見えない星も観測することができます。
若い星や星雲は、それらを含む腕の形と密接な関係があると考えられています。腕の一部の立体構造を見るため、研究チームはESA(ヨーロッパ宇宙機関)のガイア・ミッションの最新のデータを利用しました。ガイアは、星までの正確な距離を測定するためのミッションです。
スピッツァーとガイアのデータから、「いて腕」に関連する小さな構造が、ほぼ同じ速度で同じ方向に移動する若い星からなることが明らかになりました。また、「いて腕」とは大きく異なる角度で突き出していることもわかりました。
これらの画像は、スピッツァー宇宙望遠鏡が撮影したもので、左から、わし星雲、オメガ星雲、三裂星雲、干潟星雲です。今回、新たに発見された構造は、これらの四つの美しい星雲を含んでいます。
研究チームの一人、アメリカ、ウィスコンシン大学ホワイトウォーター校のロバート・ベンジャミン氏は、「この構造は天の川銀河のごく一部ではあるが、銀河全体について何か重要なことを私たちに教えてくれるかもしれません」と述べています。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
(参照)NASA