この画像は、太陽から100パーセク(326光年)以内の距離にある4万個の星が、今後40万年間に全天でどのように移動するかを示したものです。それぞれの軌跡の長さ(線の長さ)は、1つの星が40万年間にどれくらい動くかを表しています。画像はESA(ヨーロッパ宇宙機関)の位置天文衛星ガイア(Gaia)のデータを元に作成されました。
恒星は天球上で静止しているわけではなく、その位置はほんの少しずつ変化していきます。その動きのことを「固有運動」といいます。2020年12月に公開されたガイア衛星の新しいデータ(Gaia Early third Data Release、Gaia EDR3)では、2018年4月に公開されたデータ(Gaia DR2)と比べて固有運動の測定精度が2倍になりました。上の画像は、その新しいデータを用いて作られたものです。
160万年後までの星の動き
この動画は冒頭の画像よりさらに未来、160万年後までの星の動きを示したものです。
最初のフレームでは、太陽から100パーセク(326光年)以内の4万個の星の現在位置を示しています。続く数フレームで、最初の星の位置からスタートした8万年分の星の軌跡が示されます。次に星のスタート地点が消え、星の軌跡だけが表示されます。その軌跡が160万年後まで動いていきます。
星の軌跡の長さはさまざまです。短い軌跡は星の動きが遅いことを示しており、長い軌跡は動きが速いことを示しています。
星の動きは、星までの距離と移動速度によって決まります。近くにあって高速で移動する星は、空での位置が素早く変化します。一方で低速で移動する星や遠くにある星は、ゆっくりと位置を変えます。短い軌跡は暗く見え、長い軌跡は明るく見える傾向にあるのはそのためです。
動画を見ると、短い軌跡が長い軌跡に変わり、また短い軌跡に戻るものがあります。これは星が私たちに向かって動いていることを示しています。近づくにつれて軌跡が長くなり、星が通過して遠ざかるにつれて軌跡が短くなっていくのです。また動画の最後の方では、画面左に比べて右側に星が集まっているように見えます。これは太陽が動いていることによって発生する見かけ上の現象です。
Credit: ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO
(参照)Gaia