若くない赤色矮星を周回する系外惑星はハビタブル? | アストロピクス

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若くない赤色矮星を周回する系外惑星はハビタブル?

コロラド大学ボルダー校のKevin France氏らの研究チームは、赤色矮星であるバーナード星をハッブル宇宙望遠鏡とチャンドラX線望遠鏡で観測しました。バーナード星は、太陽から6光年の距離にある約100億歳の赤色矮星です。

恒星は質量が小さいほど長生きです。赤色矮星は太陽と比べると非常に低温で質量が小さく、長期間にわたり輝き続けます。また赤色矮星は、星の中では最も多く存在しています。太陽系外惑星はこれまで4000以上が発見されていますが、その多くは赤色矮星を周回する惑星です。

年齢が数十億年に満たない若い赤色矮星では、恒星表面の爆発現象であるフレアが頻繁に発生し、紫外線やX線などの高エネルギー放射が発生することが知られています。一方、バーナード星のような古い赤色矮星が、惑星にダメージを与える高エネルギー放射を放っているかどうかについてはあまり知られていませんでした。

今回の観測から、バーナード星では25%ほどの期間でフレアが発生しており、そのフレアが惑星の大気にダメージを与えている可能性があると結論づけられました。冒頭のイラストは、バーナード星のような赤色矮星(右)で発生したフレアによる放射が、岩石惑星(左)の大気を散逸させているようすを描いたものです。

2019年3月のハッブル宇宙望遠鏡による観測では紫外線高エネルギーフレアが2回、2019年6月のチャンドラX線望遠鏡による観測ではX線フレアが1回観測されました。「これらの観測がバーナード星の活動の典型例だとすれば、有害な放射が大量に発生していることになります。この活動量は古い赤色矮星としては驚くべきものです」と研究チームの一人であるコロラド大学のGirish Duvvuri氏は述べています。

赤色矮星のハビタブルゾーン(惑星表面に水が液体として存在する可能性のある領域)に岩石惑星が存在していても、若い赤色矮星からの高エネルギー放射によって大気は散逸してしまうと見られています。その後、年齢とともに恒星の活動が落ち着くと、火山活動で放出されるガスなどにより惑星の大気が再生される可能性があります。

ただ今回報告されたようなフレアは長期間にわたり繰り返し発生し、再生した大気も失われる可能性があります。そうなると生命を維持できる可能性は低くなります。一方、主星から遠い軌道を周回する惑星であれば届く高エネルギー放射の量が少なく、例えば水素など二酸化炭素以外のガスによる温室効果によって液体の水が存在できるかもしれません。

コロラド大学のAllison Youngblood氏は「現在あるいは未来において、ある惑星系に存在する惑星がハビタブルである可能性がどれくらいかは何とも言えません」と述べています。「私たちの研究は惑星が生命を維持しうるかどうかという複雑な問題において、考慮に入れるべき一つの重要な要素を示しています」

研究チームは現在、バーナード星が古い赤色矮星として典型的なものかどうかを判断するため、別の多くの赤色矮星での研究を進めています。

Image Credit: NASA/CXC/M. Weiss

(参照)Chandra X-ray Observatory