ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)の観測によって、超巨大ブラックホールのまわりに存在する六つの銀河が、天の川銀河のサイズの300倍以上も広がるガスからなる宇宙の“クモの巣”の中にあることが明らかになりました。上の画像は、その超巨大ブラックホールと宇宙の“クモの巣”、銀河からなる構造の想像図です。
クモの糸に相当するガスのフィラメントが交差するところで銀河が成長し、ガスの流れがフィラメントに沿って流れて超巨大ブラックホールと銀河に燃料を供給しているとみられます。
太陽の10億倍の質量を持つ超巨大ブラックホールを伴うこの宇宙の“クモの巣”は、誕生9億年後の宇宙で発見されました。宇宙で最初のブラックホールは恒星の崩壊から形成されたと考えられています。それが宇宙誕生9億年後に太陽の10億倍の質量にまで成長したことになります。成長のスピードは非常に速かったはずです。
しかしブラックホールが短期間のうちにそれほど巨大なサイズに成長するための“燃料”がどうやって供給されたのかを説明するのは難題でした。今回の発見からは、宇宙の“クモの巣”と銀河が、ブラックホールが急成長して超巨大ブラックホールになるための十分な量のガスを含んでいたという説明ができそうだとのことです。
このような“クモの巣”構造ができるには、巨大なダークマター・ハローが鍵を握っているとみられます。ダークマター・ハローは初期宇宙で大量のガスを引き付けていたと考えられています。ガスとダークマターが一緒になって、銀河とブラックホールが成長できるクモの巣状の構造を形成するというのです。
今回の発見は、最も遠くにある大質量ブラックホールが、大規模なダークマターハローの中で形成され成長するという考えを支持するものだと、研究チームの一人は述べています。
Image Credit: ESO/L. Calçada
(参照)ESO