2024年3月25日、太陽観測衛星SOHOの画像から新たな彗星が発見されました。チェコの市民科学者が発見したこの彗星は、SOHOのデータから発見された5000個目の彗星です。
数年で太陽を周回するこの彗星は「マースデン群」に属しています。マースデン群はマックホルツ彗星(96P/Machholz)と関連があると考えられているグループで、SOHOが発見した5000個のうち、マースデン群に属するものは75個あります。
SOHOはESA(ヨーロッパ宇宙機関)とNASAの共同ミッションで、1995年12月に打ち上げられました。SOHOに搭載された科学機器の一つであるLASCOは、太陽本体を隠すことで上層大気「コロナ」など太陽の周囲のようすを観測するための装置です。
LASCOにより、SOHOは「サングレイザー(sungrazer)」と呼ばれる彗星を観測することが可能になっています。サングレイザーとは、近日点が太陽に非常に近く、太陽をかすめるような軌道をとる彗星のことです。サングイレザーは太陽にとても近づいたときだけ明るくなるため、ほかの望遠鏡や衛星では太陽の明るさにまぎれてしまい観測することができません。SOHOの主目的は太陽の観測ですが、歴史上最も多くの彗星を発見した衛星となっています。これまで知られている彗星の半分以上はSOHOが発見したものです。
「サングレイザープロジェクト」参加の市民科学者が発見
SOHOの5000番目の彗星は、中国広州出身で現在はチェコのプラハで天文学の博士号を取得している「サングレイザープロジェクト」参加者のHanji Tan氏によって発見されました。
サングレイザープロジェクトはNASAが資金提供するプログラムで、世界中の市民科学者がSOHOの画像内で彗星を発見するのを支援しています。「私は彗星を探すのが好きで、サングレイザープロジェクトに参加しました。何千年も宇宙を旅してきた彗星が太陽の近くで明るくなるのを最初に見るのは本当にエキサイティングです」と、13歳のころからサングレイザープロジェクトに参加しているTan氏は述べています。
SOHOミッションとサングレイザープロジェクトが始まる前は、サングレイザー彗星は数十個しか記録されていなかったとのこと。それが今や5000個の大台に達したのです。
SOHOを使用して発見された多数の彗星により、研究者はサングレイザー彗星や太陽を周回する彗星の群についてより多くを学ぶことができました。またサングレイザープロジェクトによって発見された彗星が太陽の大気へ突入する様子を観測することで、研究者が太陽についてより多くのことを学ぶことにも役立ったとのことです。
ちなみにSOHOで4000個目の彗星が発見されたのは2020年6月15日でした。(参考記事)太陽観測衛星SOHOのデータから4000個目の彗星を発見!
Image Credit: NASA/ESA/SOHO
(参照)NASA