天王星には27個の衛星の存在が知られています。そのうち比較的大きなアリエル(半径578.9km)、ウンブリエル(半径584.7km)、チタニア(半径788.9km)、オベロン(半径761.4km)、ミランダ(半径235.8km)は5大衛星と呼ばれます。これらの5大衛星のうち、ミランダを除く4つの衛星が、コアと氷の地殻の間に深さ数十kmの海洋の層をもっている可能性があることを示す研究が発表されました。
5大衛星のうちチタニアは、サイズから考えて放射性同位元素の崩壊により生成される熱を内部に保持している可能性が最も高いと考えられてきました。一方で他の衛星は、天王星の潮汐力によって生じる熱がわずかなため、海洋が凍結しないようにするための熱が保持されていないと見られていました。
ボイジャー探査機と地上観測のデータをもとに再検討
今回の研究は、1980年代に天王星へ接近したNASA(アメリカ航空宇宙局)のボイジャー2号のデータと、その後の地上からの観測で得られた知見をもとに再検討したものです。NASAなどの研究チームは、ガリレオ(木星系)、カッシーニ(土星系)、ドーン(セレスなど)、ニューホライズンズ(冥王星など)といった探査機によるデータを組み込んだコンピュータモデルを構築しました。そこには天王星の衛星と似たようなサイズの天体である土星の衛星エンケラドス、冥王星とその衛星カロン、準惑星ケレス(セレス)などの情報が含まれています。
研究チームはモデルを使って天王星の衛星の表面がどれほど多孔質かを測定、十分な断熱性があって海洋をもつのに必要な内部の熱を保持している可能性が高いことを見出しました。さらに衛星のマントルに潜在的な熱源となりうるものが発見されました。それは高温の液体を放出し、海洋の温かい環境を維持するのに役立ちます。チタニアとオベロンではその可能性がとくに高いとのことです。
この研究ではまた、塩化物とアンモニアが衛星の海に豊富に存在する可能性が高いことを示唆しています。アンモニアも塩類も、海を凍りにくくするのに役立ちます。
(参照)NASA