現在、NASA(アメリカ航空宇宙局)とESA(ヨーロッパ宇宙機関)との間で、火星から試料(サンプル)を持ち帰るサンプルリターン計画が進められています。
その第1段階はすでに進行中で、2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターへ着陸して観測を続けているNASAの探査車パーサヴィアランスが、地球へ持ち帰るための試料を収集しています。NASAとESAはその試料をどのようにして持ち帰ろうとしているのか、現時点で考えられているサンプルリターンの流れを画像と動画で紹介します。NASAとESAは2030年代はじめから半ばにかけて、火星のサンプルを地球へ持ち帰ることを計画しています。
火星サンプルリターンの流れ
火星サンプルリターン計画では、サンプル回収ランダー(着陸機)のほか、地球帰還用のオービター(周回機)も送り込まれます。
サンプル回収ランダー
サンプル回収ランダーには2機の火星ヘリコプターと、サンプルを軌道上に打ち上げるための火星ロケットが搭載されます。ジェゼロ・クレーター内のパーサヴィアランスの着陸地点付近に着陸する予定です。
パーサヴィアランスが試料をランダーへ運ぶ
サンプル回収ランダーへサンプルを運ぶ作業は、主にパーサヴィアランスが担います。パーサヴィアランスが運んだサンプルチューブを、ロボットアームを使ってランダーに搭載された火星ロケット内のコンテナに移し替えます。
サンプル回収用ヘリコプター
ランダーに搭載され火星に送り込まれた2機のヘリコプターも、パーサヴィアランスが収集したサンプルチューブの回収に関して補助的な役割を担います。
火星ロケットMAV
火星ロケットMAV(Mars Ascent Vehicle)を使って、サンプルチューブが入ったコンテナを軌道上に打ち上げます。火星表面からロケットが打ち上げられるのは初めてです。
CCRS(捕獲・格納・帰還システム)
火星周回軌道にいる地球帰還船が、軌道上に打ち上げられたサンプルをCCRS(捕獲・格納・帰還システム)によって捕獲・格納します。
地球帰還船
地球帰還船が火星のサンプルを地球近傍まで運び、そこでカプセルを分離します。
地球突入システム
熱シールドを備えたカプセルで、サンプルを地上に着陸させます。
こちらは火星サンプルリターンの流れを示した動画です。Credit: NASA/ESA/JPL-Caltech/GSFC/MSFC