多数の溝に取り囲まれた火星の名も無きクレーター

この画像には火星の南半球にあるアオニア大陸の一部が映っています。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスが2022年4月25日に撮影し、6月8日にESAから公開された画像です。

画像の中央に映っているのは、直径約30kmの名も無きクレーターです。クレーターを取り囲む曲がりくねった溝は、まるで人の眼球を走る静脈のようにもみえます。これらの溝には、約35億〜40億年前に水が流れていた可能性があります。

溝は場所によって暗い物質に覆われています。また周囲よりも高くなっているように見える場所もあります。水が流れていた時代に溝の底に侵食されにくい堆積物がたまり、水が枯れた後で周囲が侵食されて溝の底だった部分が高くなったのかもしれません。あるいはかつて溝に溶岩が流れ込んだ可能性もあります。

クレーターの周囲の地表では色合いの違いが見られます。これは火星のこの地域がさまざまな物質で構成されていることを示唆しています。クレーターの内部は明るい表面の中に暗い色の砂丘が見られます。

こちらは冒頭の画像の中央のクレーター付近を斜めからみたものです。デジタル地形モデルと高解像度カメラのデータをもとに作成されました。

こちらは別角度で見たもの。クレーター内の砂丘がよく見えています。

Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin, CC BY-SA 3.0 IGO

(参照)ESA