土星の衛星タイタンをウェッブ望遠鏡とケック望遠鏡が撮影 | アストロピクス

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土星の衛星タイタンをウェッブ望遠鏡とケック望遠鏡が撮影

IMAGE CREDIT: NASA, ESA, CSA, A. Pagan (STScI). SCIENCE: JWST Titan GTO Team.
IMAGE CREDIT: NASA, ESA, CSA, A. Pagan (STScI). SCIENCE: JWST Titan GTO Team.

土星の衛星タイタンが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とハワイにあるケック望遠鏡で観測され、画像が公開されました。

タイタンは、太陽系にある衛星の中で唯一、分厚い大気を持っています。また地球以外の天体で表面に川や湖、海がある唯一の天体でもあります。ただタイタン表面にある液体は水ではなく、メタンやエタンなどの炭化水素です。大気中に漂うもやが全体を覆っており、可視光では表面を観測することができません(カッシーニ探査機が可視光で撮影したタイタンの画像はこちら)。

冒頭の画像は、ウェッブ望遠鏡がNIRCam(近赤外線カメラ)を使い、近赤外線でタイタンをとらえたものです。2022年11月4日に撮影されました。左はタイタンの下層大気に感度をもつ2.12μmのフィルタを使って撮影した画像で、北半球には雲が明るい点として映っています。

右は4つのフィルタで撮影した画像に色や明るさを割り当てて合成したもので、タイタンの表面も見えています。クラーケン海(Kraken Mare)は海、ベレット(Belet)は砂漠、アディリ(Adiri)は明るく見える地域です。

ウェッブ望遠鏡の画像には2つの雲(Cloud A、Cloud B)が見られました。これは太陽によって表面が温められる夏の終わり頃に北半球の中緯度で雲が形成されやすいという、コンピュータモデルによる長年の予測を実証するものである可能性があります。

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ハワイのケック望遠鏡で30時間後のタイタンを観測

IMAGE CREDIT: NASA, ESA, CSA, W. M. Keck Observatory. A. Pagan (STScI). SCIENCE: Webb Titan GTO Team.
IMAGE CREDIT: NASA, ESA, CSA, W. M. Keck Observatory. A. Pagan (STScI). SCIENCE: Webb Titan GTO Team.

ケック望遠鏡によるタイタンの観測が行われたのは、ウェッブ望遠鏡の観測から30時間後の11月6日のことでした。この画像は左が11月4日のウェッブ望遠鏡の画像、右が11月6日のケック望遠鏡の近赤外線カメラNIRC2による画像です。その間、地球から見てタイタンは左から右へ回転しています。

6日の画像で、Cloud Aはよく見えるようになっていますが、Cloud Bは消えつつあるか裏側に回りこみつつあるように見えます。なおタイタンの雲は地球と同様、長時間続くことはないので、4日の雲と6日の雲は別の雲である可能性もあるようです。ウェッブ望遠鏡のNIRSpec(近赤外線分光器)を使って分光データもすでに得られており、現在解析中とのことです。

(参照)Webb Space TelescopeW.M. Keck Observatory