ウェッブ望遠鏡がとらえた衝突銀河IC 1623

この画像には、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた相互作用銀河IC 1623が映っています。IC 1623は、くじら座の方向、約2億7000万光年の距離にある、一対の銀河が衝突している現場です。衝突によって爆発的な星形成(スターバースト)が生じており、天の川銀河の20倍以上もの速度で新しい星が作り出されています。

画像はウェッブ望遠鏡に搭載されたMIRI(中間赤外線装置)、NIRSpec(近赤外線分光器)、NIRCam(近赤外線カメラ)の3つの観測装置を使って赤外線で撮影された画像を合成したものです。赤外線は目で見えないので、計7波長の赤外線で撮影された画像にシアンや緑、黄や赤などそれぞれ色を割り当てて合成した擬似カラー画像になっています。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、この相互作用銀河は赤外線でとくに明るく、ウェッブ望遠鏡での観測に適しているとのことです。

画像では青い渦状腕が縦方向に伸びています。明るい赤は高温ガスの広がりを示しており、星形成を示す小さな金色の斑点がたくさん見られます。

IC 1623の画像は以前にも、ハッブル宇宙望遠鏡などで撮影されたことがあります。IC 1623では進行中のスターバーストが強烈な赤外線放射を引き起こし、また銀河中心では超大質量ブラックホールの形成過程にある可能性があります。ただ厚い塵にはばまれて、ハッブル望遠鏡などではそのようすを見ることはできません。ウェッブ望遠鏡の赤外線観測によって、その塵の奥を観察することができました。

ウェッブ望遠鏡の観測から、銀河の中心部は非常に明るくコンパクトであることが判明しました。なお、この画像では銀河中心から光のすじが放射状に伸びていますが、これは「回折スパイク」と呼ばれ、望遠鏡の構造に由来するものです。

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ハッブル、ウェッブのNIRcam、MIRI画像の比較

Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus & A. Evans
Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus & A. Evans

こちらはハッブル宇宙望遠鏡の画像(左)と、ウェッブ望遠鏡のNIRcam(中央)、MIRI(右)の画像を並べたものです。ハッブル望遠鏡の画像はWFC3(広視野カメラ3)とACS(掃天観測用高性能カメラ)を使って撮影した可視光画像で、中央は近赤外線、右は中間赤外線の画像です。

ハッブル望遠鏡の画像では塵により暗く見えている銀河の中心部が、ウェッブ望遠鏡の画像では明るく輝いているのが分かります。ハッブル望遠鏡の画像とNIRcamの画像には渦状腕が見えていますが、MIRIの画像では明るい銀河中心と加熱されたガス、そして星形成の泡だけが見えています。

なおアストロピクスでは、ハッブル望遠鏡が以前撮影し公開された画像を紹介したことがあります。次の記事をご覧ください。参考記事:合体の最終段階。衝突銀河IC 1623をハッブルがとらえた

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のウェブページでは毎月、ウェッブ望遠鏡の「Picture of the Month(今月の1枚)」として画像を公開しています。これらの画像は10月のPicture of the Monthとして紹介されたものです。

Main Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus & A. Evans、Acknowledgement: R. Colombari

(参照)ESA/Webb