マーズ・エクスプレスが見た火星のユートビア平原

この画像は、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスが、火星の北半球にあるユートピア平原をとらえたものです。ユートピア平原は、隕石衝突によってできた広大な衝突盆地と考えられており、直径はおよそ3300kmに及びます。

この平原は、水や風などにより運ばれてきた堆積物や溶岩、揮発性物質(窒素や二酸化炭素、水素や水など気化しやすい物質)などによりユートビア盆地が満たされて形成されたと考えられています。ユートピア平原では、地表やその直下、またより深いところに氷があることが分かっています。

画像の左右の表面が滑らかな部分は氷や塵が豊富な厚い層で、火星の自転軸が今よりずっと傾いていたときに雪として堆積したものとみられています。画像の中央には大きなクレーターが2つみられます。下側のクレーターの内部には、「脳地形」と呼ばれる地形がみられます。これは人間の脳の表面に似た複雑な模様や畝が見られることからそのように呼ばれています。(脳地形についてはこちらの記事もご覧ください)

そのクレーターのすぐ右側の特に暗い部分は、氷の豊富な大地が低温のため収縮してひび割れて形成された領域です。多角形のパターンと割れ目が形成され、その後、風で飛ばされてきた暗い塵をとらえて、画像に見られるような暗い外観になりました。

画像にはまた、円形や楕円形の窪みがあちらこちらにみられます。これらの窪みは深さが数十mあり、大きさは直径数十〜数千mとさまざまです。地表の氷が融解あるいは気化したことで地表が弱くなり崩壊してできたとみられます。

これらは、デジタル地形モデルとカラー画像をもとに作成されたもので、大きな2つのクレーターの周辺を斜めから見みています。

画像はいずれも、2021年7月12日にマーズ・エクスプレスのHRSC(高解像度ステレオカメラ)で取得したデータをもとに作られ、2022年3月30日に公開されたものです。

Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin, CC BY-SA 3.0 IGO

(参照)ESA