この画像は、ジェゼロ・クレーター内の三角州(デルタ)の端の斜面(scarp)を、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車パーサヴィアランスがとらえたものです。パーサヴィアランスが撮影した画像から、この地域がかつて大規模な洪水を経験していたらしいことが示されました。
三角州は、川に運ばれてきた砂礫が河口付近で堆積して形成されます。パーサヴィアランスが撮影した三角州の端の斜面の下半分は、地球上の三角州で見られるような地層が見られましたが、その上部には石や岩がとらえられました。斜面には、本来そこにあるはずのない1.5mもの大きさの岩が存在する層があったのです。
そのような地層は、ゆっくり流れて三角州を形成していた川で、後に流れの速い鉄砲水が発生したことを意味しています。パーサヴィアランスの科学チームは、その激流は時速6〜30kmに及んだと推定しています。
また科学チームによると、ジェゼロ・クレーターの水位は数十m単位で上下したのち、最終的に水が全てなくなったとのことです。そのような水位の変動が洪水によるものなのか、もっと緩やかな環境変化によるものなのかは不明です。科学チームでは、この現象がジェゼロ・クレーターの三角州の歴史の中で、湖の最高水位よりも水位が100m低かった頃に発生したと見ています。三角州は、来年行われる探査車の第2次科学キャンペーンのスタート地点であり、科学チームは今後、さらなる知見を得たいと考えています。
こちらは、宇宙からとらえたパーサヴィアランス周辺の画像です。画像左上側がクレーター内の三角州で、「Scarp a」が冒頭の画像の場所です。画像はNASAの火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影しました。
こちらは、パーサヴィアランスのカメラMastcam-Zで撮影された、三角州の端の部分の画像をモザイク合成したものです。「Scarp a」などは、上のマーズ・リコネッサンス・オービターの画像と対応しています。