2機の衛星の編隊飛行で人工皆既日食を起こし撮影した太陽のコロナ | アストロピクス

2機の衛星の編隊飛行で人工皆既日食を起こし撮影した太陽のコロナ

この画像には、「コロナ」と呼ばれる太陽の上層大気が映っています。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の技術実証衛星Proba-3が、2025年5月23日に撮影しました。Proba-3は、人工的に皆既日食を起こして太陽コロナの観測を行うことができます。

太陽のコロナは太陽本体と比べると非常に暗いため、コロナを観測するには太陽本体を隠す必要があります。Proba-3は観測機器を搭載したコロナグラフ衛星と、太陽を隠す役割を持つオカルター衛星という2機の宇宙船で構成されています。観測時、2機の宇宙船は150メートルの距離を空けて太陽に対して一直線に並びます。その際、相対位置は1mmの精度で維持されます。そして太陽側に位置するオカルター衛星が搭載する直径1.4メートルの円盤が太陽を隠し、コロナグラフ衛星の観測機器ASPIICSに直径8センチメートルの影を落とします。

太陽面を円盤で隠してコロナを観測することはこれまでにも行われてきました。ただ回折と呼ばれる現象により円盤の端から迷光がもれてきてしまうため、太陽に近い領域の観測が難しくなります。Proba-3では、2機の距離を150メートル空けることで迷光の発生を抑えています。それにより、太陽に非常に近い領域のコロナまで観測できるようになります。

自然に起きる日食では、太陽に近い領域のコロナを観測できます。Proba-3の画像は自然の日食に匹敵するほどだと、ベルギー王立天文台ASPIICS主任研究員のAndrei Zhukov氏はコメントしています。皆既日食は年に1回程度しか発生しませんが、Proba-3では19.6時間ごとに一度の日食を作り出すことが可能です。また、自然の皆既日食は数分程度しか継続しませんが、Proba-3では最大6時間、人工日食を維持することができます。

今回の撮影はまだ試運転段階で、今後は完全に自律的な編隊飛行を達成する予定だとのことです。

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Image Credit: ESA/Proba-3/ASPIICS/WOW algorithm

(参照)ESA