金星の分厚い雲の下の大地を太陽探査衛星が可視光で初撮影 | アストロピクス

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金星の分厚い雲の下の大地を太陽探査衛星が可視光で初撮影

Credit: NASA/Johns Hopkins APL/NRL
Credit: NASA/Johns Hopkins APL/NRL

NASA(アメリカ航空宇宙局)の太陽探査衛星パーカー・ソーラー・プローブは、金星の重力を利用して軌道を変えるフライバイを行いながら、太陽に近づいています。金星でのフライバイは、合計7回行われます。この画像は、2021年2月に行われた4回目の金星フライバイの際に、衛星に搭載されたWISPR(広視野撮像装置)を使って撮影された金星の画像です。可視光〜近赤外の波長で金星の夜側を撮影したもので、大陸や平原、大地など特徴的な地形が映し出されています。

Credit: NASA/Johns Hopkins APL/NRL (left); Magellan Team/JPL/USGS (right)
Credit: NASA/Johns Hopkins APL/NRL (left); Magellan Team/JPL/USGS (right)

こちらはパーカー・ソーラー・プローブの4回目の金星フライバイの際に得られた画像を、1990年代にNASAのマゼラン探査機がレーダーでとらえた金星表面の画像と比較したものです。WISPRの画像に映る地形が、レーダー画像に見られる地形と一致しているのが分かります。

Credit: NASA/Johns Hopkins APL/NRL; Magellan Team/JPL/USGS
Credit: NASA/Johns Hopkins APL/NRL; Magellan Team/JPL/USGS

こちらは2020年7月の3回目の金星フライバイの際に撮影された画像を、マゼランのレーダー画像と比較したものです。やはり地形の特徴が一致しているのが分かります。なおこのときのWISPRの画像についてはアストロピクスでも以前紹介したことがあります。

地球の一つ内側を公転する金星は全体が分厚い雲に覆われており、ふつう可視光では宇宙から金星の表面を見ることができません。可視光の波長で金星の表面が撮影されたのは初めてとのことです。

金星の雲は、表面からの可視光をほとんど遮りますが、近赤外線との境界付近の波長の長い可視光は透過します。その赤い光は、金星の昼側では雲の表面で反射する光の明るさにまぎれてしまい撮影することはできませんが、夜側であれば、高温の金星表面から放射されるそのかすかな輝きをWISPRで捉えることができるのです。WISPRがとらえた画像では、標高の高いところは温度が比較的低いため暗く見えます。

(参照)PARKER SOLAR PROBE