黄道光の源は小天体ではなく火星だった!? | アストロピクス

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黄道光の源は小天体ではなく火星だった!?

夜明け前や夕暮れ後の夜空で、地平線から伸びる淡い光の帯が見えることがあります。これは「黄道光」と呼ばれ、太陽系内に漂う小さな塵からなる雲に太陽光が散乱して淡く光っているものです。それらの塵は小惑星や彗星などがもたらしていると考えられてきました。今回、木星探査機ジュノーの科学者チームによって、その塵の起源が火星ではないかとする研究が発表されました。

2021年3月1日に撮影された写真です。淡く光る黄道光が映っています。Credit: NASA/JPL-Caltech

2011年に打ち上げられたジュノー探査機は、2016年に木星に到着しました。そのジュノー探査機が地球から木星へ向かう途中で意図せず塵の粒子を検出しました。塵粒子の検出は、ジュノー探査機に搭載されたスタートラッカーによるものでした。スタートラッカーは、宇宙空間を撮影して画像に映った星の配置のパターンから探査機の姿勢を知ることができる装置です。

スタートラッカーを設計したデンマーク工科大学のJohn Leif Jørgensen氏は、未知の小惑星を発見できるかもしれないと考え、撮影した複数の画像に映っているけれども、既知の天体のカタログには載っていないものを検出するプログラムをスタートラッカーに組み入れました。Jørgensen氏の期待はそれほど大きくはなかったようですが、実際には何千もの正体不明の光の点が映し出されたのです。

その原因を探る中で、ジュノーの燃料漏れの可能性も心配されたとのことです。しかし画像に映っている物体の見かけの大きさと速度を計算した結果、それらはジュノーの太陽電池パネルから来ていることが判明しました。宇宙空間を漂う塵粒子が太陽電池パネルの裏側に衝突して生じたものだと分かったのです。

塵の衝突は、地球の軌道と小惑星帯の軌道の間で記録されていました。地球の重力によって塵が吸い寄せられてしまうため、内側は地球軌道で終わるとみられています。一方、塵の雲の外側は太陽から約2天文単位(太陽〜地球間の距離の2倍)あたりで終わっていました。木星の重力により、塵が外側に行くのが妨げられているとみられています。

塵粒子は太陽のまわりをほぼ円軌道で回っています。太陽から2天文単位付近をほぼ円軌道で回る天体は火星だけであり、火星がそれらの塵の源だと考えるのは自然なことだとJørgensen氏は述べています。火星には塵が多く存在し、全球的な砂嵐もしばしば発生します。ただJørgensen氏らは、塵が火星の重力を振り切ってどうやって宇宙空間へ逃げ出したのかは説明できておらず、今後の研究に期待しているとのことです。

木星探査機ジュノー。Credit: NASA/JPL

(参照)JPL