2022年12月にミッションを終了したNASAの火星着陸機インサイトの観測データの分析から、火星には硫黄と酸素が豊富な液体の鉄合金コア(核)があることが明らかになりました。地球以外の惑星のコアを直接観測したのは初めてです。
インサイトの着陸地点からみて火星の裏側で発生した2つの地震のデータから、火星のコアを伝わる地震波が検出されました。地震は2021年8月25日と9月18日に発生したもので、1つは火山性地震、もう1つは衝突現象によるものです。
地球とは異なる火星のコア
コアを通過した地震波を、コアを通らずマントルを伝わってきた地震波と比較、またほかの地震や地質学的なデータと組み合わせることで、地震波が通過した物質の密度や圧縮率が推定されました。その結果、地球とは異なり火星のコアは完全に液体である可能性が高いことが示されました。
また硫黄や酸素、炭素、水素などの軽元素が大量に存在していると推定され、コアの重量の5分の1ほどが軽元素で構成されていることが示唆されました。地球のコアでは軽元素の割合は比較的少なく、火星のコアが地球と比べてはるかに密度が低く圧縮されやすいことを示しています。コアの組成などを理解することは、惑星ができたころの太陽系の状況や、惑星がどのように進化してきたのかなどといったことの手がかりにつながります。
Main Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Maryland