土星の大きな衛星はなぜタイタンだけなのか。説明可能なシナリオを初めて提唱 | アストロピクス

【Googleニュースでアストロピクスをフォローして新着記事をチェック!】

土星の大きな衛星はなぜタイタンだけなのか。説明可能なシナリオを初めて提唱

ガス惑星のまわりの円盤で、衛星が形成されるときのイメージ図。Image Credit: 名古屋大学

巨大ガス惑星である木星と土星には、数多くの衛星が存在しています。ただ比較的大きな衛星は、木星に4つあるのに対して、土星にはタイタン1つしかありません。土星のように、ガス惑星のまわりに大きな衛星が1つだけ存在する状態というのは、実はきちんと説明できる理論がこれまでありませんでした。

惑星ができるときには、惑星のまわりにガスと塵などからなる円盤が作られます。その円盤の中で固体成分が集まって成長しながら、複数の衛星が同時に形成されると考えられています。

仮にタイタン程度にまで大きくなったとしても、多くの衛星は円盤のガスから力を受けて回転の勢いを失い、惑星の方へと落ちていってしまうと考えられてきました。

衛星が形成されるときのそのような困難を解決するため、さまざまな説が提唱されてきました。ただ、これまで考えられてきた理論では、複数の衛星を残すことはできるのですが、そもそも1つだけしか衛星ができないと仮定する以外に、衛星が1つだけ残ることを説明できませんでした。

円盤のガスから衛星が受ける力は、ガスの温度に大きく影響されます。名古屋大学の藤井悠里特任助教と国立天文台の荻原正博特任助教の研究チームは、ガスや塵などによる熱の放射や吸収の影響を取り入れて、従来の研究よりも円盤の温度や密度の状態をくわしく計算しました。

そのように実際の状態に近い円盤で、衛星がどのように動くのかを解析したところ、惑星から遠ざかる方向へ衛星が押される「安全地帯」が円盤の中に存在する場合があることが分かりました。

ガスの摩擦によって円盤内は惑星に近い内側ほど温度が高く、外側ほど低温になります。計算の結果、「安全地帯」の周辺では内側と外側の温度差が特に大きくなることが分かりました。その急な温度差によって、内側と外側のガスから受ける力に差が生じて衛星が外側に押されるため、衛星が惑星に落ちていかずにとどまっていられる領域ができていたのです。

そのような「安全地帯」に衛星が一時的に入り込み、円盤のガスがなくなるまで生き残ることができれば、ガス惑星のまわりに衛星が1つだけ形成される場合があることが示されました。

土星の衛星タイタン。横に見えるのは衛星ディオーネ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

https://www.nao.ac.jp/news/science/2020/20200309-cfca.html

https://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20200309