この画像は、銀河団MACS J0417.5-1154をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた画像の一部です。赤みを帯びたいくつかの銀河が、まるで「?(クエスチョンマーク)」のような形に並んでいるようにみえます。画像はウェッブ望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)で撮影されました。
「?」の上部を形作っているのは実際には一つの銀河です。銀河団の巨大な重力によって、奥にある遠方銀河の像が複数現れているのです。
銀河団MACS J0417.5-1154の質量は非常に大きく、周囲の時空を歪ませています。このように天体の重力によって、遠方にある天体の像が拡大されたり歪んだり、明るくなったりする現象を「重力レンズ」といいます。重力レンズによって、奥にある天体の像が引き延ばされたり、複数の像が現れたりすることもあります。
銀河のペアが5つに分かれて見えている
画像に見られる「?」の上部を構成しているのは、相互作用している銀河のペアです。その銀河のペアは、この画像のように5つに分かれて見えています(A〜E)。「?」の下部の点は無関係の銀河で、離れたところに銀河のペアの像が1つ見えています(E)。なおDは、銀河団の銀河の一つにまぎれてしまいほとんど見えていません。
ペアになっているどちらの銀河にも、おそらく相互作用の結果とみられる活発な星形成領域があります。ただ銀河の形がそれほど崩れていないことから、相互作用は始まったばかりだとみられています。
ハッブル宇宙望遠鏡の画像との比較
同じ領域を以前、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したことがあります。こちらはハッブル望遠鏡の画像(左)とウェッブ望遠鏡の画像(右)を並べたものです。ハッブル望遠鏡の画像では、宇宙に漂う塵のため「?」は見えていません。ウェッブ望遠鏡の画像では、赤外線で見ることで塵を透過して銀河が検出されています。
(参考)「重力レンズ」関連記事一覧
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Vicente Estrada-Carpenter (Saint Mary's University)