探査車パーサヴィアランスが35億年前の三角州の2地点でサンプル採取

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
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この画像は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車(ローバー)パーサヴィアランスが、ジェゼロ・クレーター内にある三角州(デルタ)で撮影したものです。ローバーがサンプル(試料)を採取した「ワイルドキャット・リッジ(Wildcat Ridge)」と「スキナー・リッジ(Skinner Ridge)」と名付けられた2地点が映っています。20m以内の距離にあるそれらの2地点から、パーサヴィアランスは直径13mm、長さ60mmのサンプルを採取しました。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
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こちらの画像ではサンプル採取した2か所の位置を示しています。

ジェゼロ・クレーターの三角州は、かつて川で運ばれた土砂が堆積して約35億年前に作られたものです。デルタにある堆積岩は、かつて存在していたかもしれない微生物の痕跡を探すのに最適な場所の1つだと考えられています。

画像は2022年8月4日(518火星日)にパーサヴィアランスのマストカメラ(Mastcam-Z)で撮影された画像をモザイク合成して作られました。

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ワイルドキャット・リッジ

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
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こちらの画像はサンプルが採取された露頭の1つ「ワイルドキャット・リッジ」を映したものです。画像中央にサンプルを採取した穴が見えます。その右側の明るい円形部分(直径5cm)は岩石の組成を調べるために削られた場所です。こちらの画像も2022年8月4日に撮影された画像をモザイク合成したものです。

ワイルドキャット・リッジでのパーサヴィアランスの調査では有機物が検出されました。これまでにも探査車により火星表面で有機物が発見されたことはあります。ただ従来と異なり今回の調査は、微生物が存在した可能性がある環境下で堆積した岩で行われました。ワイルドキャット・リッジでの分析では、これまでのミッションで最も豊富な有機物が検出されたのです。

カリフォルニア工科大学のKen Farley氏は「ワイルドキャット・リッジのサンプルに何が含まれているかのさらなる結論は、火星サンプルリターン計画により地球に持ち帰るまで待つ必要がある」と述べています。

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スキナー・リッジ

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
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この画像は、スキナー・リッジ付近の画像です。央下に見える露頭がスキナー・リッジで、削られた直径5cmの円形部分が明るく見えています。画面上端近くには、層状の堆積岩が映っています。

画像は2022年6月30日から7月8日にかけてMastcam-Zで撮影された画像をモザイク合成したものです。この画像が撮影されて数日後に、パーサヴィアランスはスキナー・リッジからサンプルを採取しました。

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スキナー・リッジとワイルドキャット・リッジでは岩の組成が違う

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
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これらの画像はどちらも岩石を削った跡を撮影したもので、左はスキナー・リッジ、右はワイルドキャット・リッジです。2022年6月29日(482火星日)と7月21日(504火星日)に、パーサヴィアランスのロボットアーム先端にあるSHERLOC装置のWATSONカメラで撮影されました。

スキナー・リッジの岩石は砂岩で、ワイルドキャット・リッジの岩よりも大きな粒子で構成されています。スキナー・リッジでの岩石と鉱物の破片はさまざまな組成をもっており、ジェゼロ・クレータからおそらく数百km離れたところから水によって運ばれたものです。

ワイルドキャット・リッジの岩は、より細粒化した堆積岩で、硫酸塩を含む泥岩です。スキナー・リッジよりも組成は均質で、遠い過去におそらくはかつてあった湖の水が蒸発した際に塩水条件下で形成されたとみられます。

(参照)Mars Exploration Program