火星の地下氷の最新マップが公開された

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Planetary Science Institute
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Planetary Science Institute

この画像は、火星表面のグレースケールの高低差マップ(白が標高が高く黒が低い)に、地下1〜5mに存在するとみられる水の氷の分布(水色)を重ねたものです。

火星の地下にある水の氷の地図は、SWIM(Subsurface Water Ice Mapping)プロジェクトによって作成されました。SWIMは、アメリカ、アリゾナ州ツーソンにある惑星科学研究所(PSI)が主導し、NASAジェット推進研究所(JPL)が管理するプロジェクトです。

今回作成された氷の最新マップは第4版で、2017年にプロジェクトがスタートして以来、最も詳細なマップとなっています。第4版では、深さ0〜1m、1〜5m、5mより深いところにある氷を示す3種類のマップが作成されました。冒頭の画像は、そのうち地下1〜5mの水氷の存在を示す地図の一部です。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Planetary Science Institute
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Planetary Science Institute

こちらは地下1mまでの範囲に埋もれている水の氷の分布を示したものです。氷が露出したクレーターの位置が赤で示されています。

地図の作成にあたっては、NASAの火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)や2001マーズ・オデッセイ、すでに退役したマーズ・グローバル・サーベイヤーなどのデータが使われています。第3版までカメラやレーダー、分光計、サーマルマッピングの低解像度のデータが使われてきました。第4版から、MROの高解像度カメラのデータが利用されました。

第4版の地図では、MROがとらえた、水の氷が露出する衝突クレーターや、地下の氷の影響によって形成される地表のポリゴン地形などの位置も示されています。

氷が露出したクレーター。MROが高解像度カメラHiRISEで撮影した画像です。クレーターはポリゴン地形に囲まれており、地下に多くの氷が存在する可能性があることを示唆しています。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
氷が露出したクレーター。MROが高解像度カメラHiRISEで撮影した画像です。クレーターはポリゴン地形に囲まれており、地下に多くの氷が存在する可能性があることを示唆しています。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
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地下にある水の氷は将来の探査にとって重要

将来の火星有人探査の想像図。Image Credit: NASA
将来の火星有人探査の想像図。Image Credit: NASA

火星の表面は気圧が低く、液体の水は安定して存在できません。極地方には氷が大量に存在しますが、探査機や宇宙飛行士が長期滞在するには低温すぎます。

記事の冒頭の画像は、火星の北半球の赤道付近から中緯度のあたりが示されています。火星の北半球の中緯度地域は、他の地域と比べて大気が厚く、降下する宇宙船の速度を効率的に落とすことができます。また将来的に宇宙飛行士が降り立つとしたら、水の氷が存在する領域の最南端に近いところが理想的と考えられます。保温のためのエネルギーが減れば、そのぶん、別のことにエネルギーを使うことができるからです。

水の氷は、将来的な有人探査において非常に重要です。水として利用するのはもちろん、酸素を取り出して呼吸に利用したり、また酸素や水素をロケットの燃料にすることもできます。氷はまた、科学的にも重要です。氷が放射線シールドとして機能し、火星の古代の生命体の保存に重要な役割を果たしている可能性もあります。

(参照)NASAPSI(Planetary Science Institute)