火星の南極付近では、春になるとたくさんの「クモ(spider)」があらわれます。もちろん生物のクモが出てくるわけではありません。
冒頭の画像は、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機エクソマーズ・トレース・ガス・オービター(TGO)が、火星の南極付近を撮影したものです。まるでクモのような暗い模様が数多く見られます。
火星の南極では冬の間、二酸化炭素の氷(ドライアイス)が堆積します。「クモ」は、春になってドライアイスの層に春の日差しが降り注ぐようになると出現します。火星の南極の春の風物詩のようなものです。
太陽光は層の底のほうにあるドライアイスを温めてガスに変えます。ガスがたまって圧力が高まると、氷の亀裂を通って表面に噴水のように噴き出します。そのとき、氷の下にある暗い塵もいっしょに噴出します。噴き出した暗い塵が表面に蓄積することで「クモ」が形成されるのです。
画像は2020年10月4日に撮影されました。
Image Credit: ESA/TGO/CaSSIS
(参照)ESA