
この画像に映っているのは、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた青色コンパクト矮小銀河マルカリアン178(Mrk 178)です。Mrk 178は、おおぐま座の方向、地球から1300万光年の距離にあります。Mrk 178の周囲には、より遠方にある銀河も数多く映し出されています。
Mrk 178は、1500以上あるマルカリアン銀河の一つです。これらの銀河の名前は、紫外線で非常に明るい銀河のリストを作成した、アルメニアの天体物理学者ベンジャミン・マルカリアンに由来しています。
ウォルフ・ライエ星が多数存在
Mrk 178が全体的に青く見えるのは、塵に覆われていない若く高温の星が数多く存在しているためです。一方、明るい赤色に見える一部の領域には大質量星の集団が集中しています。
Mrk 178には「ウォルフ・ライエ星」と呼ばれるタイプの珍しい天体が数多く存在しています。ウォルフ・ライエ星は、特に巨大な大質量星が強力な恒星風によって星の外層のガスを放出した天体です。ウォルフ・ライエ星の高温の恒星風からの明るい輝線が、Mrk 178のスペクトルには刻まれています。ハッブル望遠鏡がとらえたこの画像では、特に電離した水素と酸素が赤く見えています。
ウォルフ・ライエ星の段階にある期間は、わずか数百万年ほどしか続かず、最終的には重力崩壊してブラックホールや中性子星になります。Mrk 178に多くのウォルフ・ライエ星が存在することは、最近、何らかのきっかけでこの銀河で大量の星が爆発的に形成されたことを示しています。
Mrk 178の周囲では、潮汐力の影響でできたと見られる暗い構造が検出されていることから、小さな衛星銀河との相互作用が爆発的な星形成の原因だったのではないかとみられています。
画像はACS(掃天観測用高性能カメラ)とWFC3(広視野カメラ3)で撮影されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の「今週の1枚(Picture of the Week)」として2025年12月8日に公開されました。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, F. Annibali, S. Hong
(参照)ESA/Hubble

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