過去の爆発で放出されたガスと塵の星雲に囲まれた巨大星「りゅうこつ座AG星」

これらの画像に映っているのは、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた「りゅうこつ座AG星」です。りゅうこつ座AG星はガスと塵からなる星雲に取り囲まれており、星雲は差し渡し約5光年あります。

1枚目の画像で赤く見えているのは、電離した水素や窒素です。2枚目の画像では、星の光を反射して輝く塵の分布が青で示されています。塵の泡やフィラメントは、強力な恒星風によって形成されたと見られています。

りゅうこつ座AG星は「高光度青色変光星(LBV)」に分類される巨大な星で、高温(青)で非常に明るい変光星です。高光度青色変光星は、進化の最終段階で十分な質量が失われて星が安定状態に達するまで、星の物質の大部分が周辺の星間空間へ放出されて質量が減り続けます。

りゅうこつ座AG星の周囲の星雲は、過去に起きた複数の爆発で放出された物質でできています。およそ1万年前にできたもので、観測されたガスの速度は秒速約70kmにもなります。画像からは星雲がリング状に見えますが、実際には中空の球殻状になっており、中央部分は秒速200kmに及ぶ強力な恒星風によって吹き払われています。

画像は、ハッブル宇宙望遠鏡の「今週の1枚(Picture of the Week)」として2021年9月13日にリリースされたものです。画像に映るりゅうこつ座AG星は、2021年4月に公開された、ハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ31周年記念画像の被写体となっていた天体です。比べてみると、今回紹介する画像の方がより細部が映し出されていることがわかります。

Image Credit: ESA/Hubble and NASA, A. Nota, C. Britt

(参照)ESA/Hubble