火星の2つの衛星は共通の祖先の残骸か!? | アストロピクス

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火星の2つの衛星は共通の祖先の残骸か!?

火星の衛星フォボス。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
火星の衛星フォボス。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

火星にはフォボスとダイモス(デイモス)という2つの衛星があります。それら2つの衛星は、かつて天体衝突により壊れた大きな衛星の残骸であるとする研究が発表されました。チューリッヒ工科大学とチューリッヒ大学の研究者がアメリカ海軍天文台との共同で行った研究です。

内側をまわるフォボスは直径22kmほど、ダイモスは直径12kmほどの小さな衛星です。ジャガイモのようないびつな形をしており、火星の重力にとらえられた小惑星ではないかともいわれています。ただ捕獲された天体の場合、惑星をまわる公転軌道は楕円になり、軌道の傾きは不規則になると予想されています。しかし実際には火星の衛星の軌道はほぼ円形で、火星の赤道面で公転しています。

研究チームは、コンピューター・シミュレーションを使い、過去にさかのぼってフォボスとダイモスの軌道を調べました。その結果、それらの衛星の軌道がかつて交差しており、2つの衛星は同じ起源を持っているだろうと結論づけました。フォボスとダイモスは、より大きな衛星が天体衝突により壊れた衛星の残骸ではないかとしたのです。何百ものシミュレーションの結果、フォボスとダイモスが誕生したのは10億〜27億年前の間だと研究チームでは考えています。

正確な時間はフォボスとダイモスがどれだけ多孔質であるかといった物理的な特性に依存するといいいます。研究チームは、2024年に打ち上げが予定されている日本の探査機MMXが持ち帰るサンプルによって、衛星の起源をより正確に計算するための衛星内部の情報が得られるだろうと期待しています。

また研究チームの計算によれば、ダイモスは誕生場所の近くに今もとどまっていますが、フォボスは火星に接近しています。今後、ダイモスは火星からゆっくりと遠ざかっていき、一方でフォボスは4000万年以内に火星に衝突するか、火星に近づいて潮汐力で破壊されると見られるとのことです。

(参照)ETH Zurich