NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星ヘリコプター「インジェニュイティ」が2021年5月7日(日本時間8日)、5回目の飛行を行い、129メートル離れた場所へ初の片道飛行に成功しました。今回の飛行は日本時間8日午前4時26分に始まり、飛行時間は108秒間でした。
これまでの飛行でインジェニュイティは、「ライト兄弟飛行場(Wright Brothers Field)」と命名された場所で離陸と着陸を行なってきました。離陸して上昇後に水平方向へ移動したのち、同じ場所に戻って着陸していたのです。5回目の今回の飛行は初の片道飛行で、ライト兄弟飛行場とは別の場所に着陸しました。新たな飛行場へと到着したのち、インジェニュイティはこれまでの最高高度となる10メートルまで上昇しました。
今回の飛行は、火星ヘリコプターが技術実証から運用実証段階に移行したことを意味しています。運用実証段階では、例えば探査車が向かおうとしている場所の偵察や、探査車では入り込めない場所の観測、空中からのステレオ画像撮影など、将来の探査に役立つような運用方法の実証が主な目的となります。
5回目の飛行の着陸地点は、前回の飛行で得られた情報をもとに選定されました。4回目の飛行時に行われた空中からの「偵察」によって決められたのです。
新しい飛行場へ着陸したインジェニュイティは今後、探査車パーサヴィアランス経由での管制官からの指示を待つことになります。パーサヴィアランスは現在、観測やサンプル収集を開始するために南下しています。パーサヴィアランスは、短期的にはヘリコプターが追いつけなくなるような長距離移動をする予定はないため、インジェニュイティは運用実証を継続できます。
当初の目的だったヘリコプターの飛行性能データについては、すでに全て収集済みとのことです。今後はパーサヴィアランスの科学運用のさまたげにならないよう、今後数週間で何回かの飛行を行う予定になっています。