ダークマターの観測結果と理論の間に予想外の不一致

宇宙にはさまざまな波長で光っている星や銀河などのほかに、電磁波では観測できない「ダークマター(暗黒物質)」が存在しています。直接見ることはできませんが、ダークマターの重力は「重力レンズ効果」をもたらします。

重力レンズは、アインシュタインの一般相対性理論から予言された現象です。光は重力によって曲がります。銀河団やダークマターの重力によって、より遠方にある銀河から来る光が曲がり、銀河の形がゆがんで見えたり、いくつかに分かれて見えたりします。そのような銀河団内の重力レンズ効果を測定することで、逆にダークマターの分布を調べることができます。

冒頭の画像は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した大質量の銀河団MACS J1206です。遠方の銀河の像がゆがみ、円弧状などに見えています。

画像内の右上と下の枠内は、遠くにある銀河が手前の銀河の重力レンズによってリング状になったり、いくつかに分裂して見えたりしている例です。左上の枠内の銀河周辺にある赤い塊は、遠方の一つの天体にある水素の雲からの放射を示しています。これらの塊は、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)に設置された観測装置MUSEで検出されました。

MACS J1206を含めた複数の巨大な銀河団を調査した最近の研究によると、ダークマターは銀河団内で全体的に分布するだけでなく、個々の銀河のような小さなスケールでダークマターが集中していることが分かりました。そのようなダークマターの集中が、理論的な予想よりも10倍も強い重力レンズ効果を生み出していました。

観測結果と理論との不一致は、シミュレーションに何らかの物理的な要因が欠けているか、ダークマターの性質についての理解がまだ足りていないことを示唆しているとのことです。

Image Credit: NASA, ESA, P. Natarajan (Yale University), G. Caminha (University of Groningen), M. Meneghetti (INAF-Observatory of Astrophysics and Space Science of Bologna), and the CLASH-VLT/Zooming teams
Acknowledgement: NASA, ESA, M. Postman (STScI), and the CLASH team

(参照)Hubblesite

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