火星ヘリ、冬を乗り越え飛行再開へ | アストロピクス

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火星ヘリ、冬を乗り越え飛行再開へ

探査車パーサヴィアランスが2021年6月15日に撮影したインジェニュイティ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
探査車パーサヴィアランスが2021年6月15日に撮影したインジェニュイティ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS

NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星ヘリコプター「インジェニュイティ」は2021年4月19日の初飛行以来、これまで29回の飛行を行ってきましたが、2022年6月11日に29回目の飛行を行った後は2か月間以上、飛行を休止していました。インジェニュイティ(と探査車パーサヴィアランス)のいるジェゼロ・クレーターが冬の時期で、電力を十分に確保できなかったためです。

そのインジェニュイティが飛行を再開することになりました。30回目の飛行について、NASA・JPL(ジェット推進研究所)のインジェニュイティチームリーダーのTeddy Tzanetos氏が火星ヘリのウェブサイトで飛行再開について報告しているので紹介します。

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30回目の飛行は短時間、短距離

ジェゼロ・クレーターはまだ冬で、夜間の気温はマイナス86℃まで下がります。また冬の間は、昼間でも太陽電池パネルに当たる太陽エネルギーの量が少なく、バッテリーの充電を十分に維持することができません。

冬になるまでは、夜間に機器が凍結して破損しないように、電力を使ってヒーターで機器を温めていました。冬の間、インジェニュイティは101火星日にわたり夜に凍結を経験しました。ヘリコプターがまだ飛行可能であることを確認するため、8月6日には50rpm(毎分50回転)の回転、8月15日にはさらに高速の回転(数秒間、2573rpm)を実行しました。その際のデータは、飛行可能であることを示しているとのことです。

30回目の飛行は、短時間で短距離の飛行になります。最大高度5mまで上昇し、その後、横方向へ2m移動して着陸します。飛行時間は33秒です。できるだけ長時間バッテリーの充電を行うため、現地での午後遅い時間帯に行われる予定です。

今後、充電状態が良くなれば飛行時間が長くなり、夜間の保温も再び行われるようになります。9月にはソフトウェアのアップデートを行い、デルタ(三角州)地形を適切に飛行できるようになるとのことです。

(参照)Mars Helicopter Tech Demo