2019年10月ごろから2020年4月ごろまで、オリオン座の1等星ベテルギウスが暗くなったことが話題になりました。以前アストロピクスでも紹介したように、このベテルギウスの減光は星の表面に現れた巨大な黒点によるものではないかとする研究が2020年6月末に発表されていました。
今回、ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって、この減光は宇宙に放出された大量の高温物質が塵の雲を形成し、ベテルギウス表面からの光をさえぎった可能性が高いとする研究が発表されました。
研究チームはハッブル宇宙望遠鏡を使い、2019年1月から紫外線によるベテルギウスの分光観測を行っていました。2019年9月から11月にかけて、星の表面から外層大気へ時速30万km以上で移動する物質が測定されました。
この物質は、星の通常の明るさより2〜4倍明るかったとのことです。そのおよそ1か月後、ベテルギウスが暗くなるのに合わせて星の南側の領域が著しく暗くなっていきました。放出された高温高密度のプラズマが外側に達して冷やされて塵粒子を形成したと研究チームでは見ています。それにより生じた塵の雲がベテルギウス表面の約4分の1をさえぎったのです。
冒頭の想像図は、そのようすを描いたものです。左から1〜2枚目は、明るい高温のプラズマが星の表面から噴出しているようすが描かれています。3枚目は急速に外に向かったガスが冷やされて大量の塵の雲が形成されているようすです。いちばん右は地球から見たときの視点で描いたもので、巨大な塵の雲によりベテルギウスの南側からの光がさえぎられています。
この解釈は、可視光画像ではまだ暗かったにもかかわらず、星の外層大気のふるまいが通常に戻っていたことを示した2020年2月のハッブル宇宙望遠鏡による紫外線での観測結果とも合致するとのことです。
Image Credit: NASA, ESA, and E. Wheatley (STScI)
(参照)Hubblesite