太陽系が生まれたのは、今より1万光年も銀河系中心に近い場所だった!? | アストロピクス

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太陽系が生まれたのは、今より1万光年も銀河系中心に近い場所だった!?

太陽系は現在、天の川銀河の中心から約2万7000光年離れたところを周回しています。ただ約46億年前に太陽系が生まれたのは、現在よりも1万光年ほど銀河系中心に近いところだったのではないかとする研究が発表されました。

天の川銀河における太陽系の現在の位置。現在、太陽系は銀河系中心から約2万7000光年の距離にあります。Image Credit: NAOJ
天の川銀河における太陽系の現在の位置。現在、太陽系は銀河系中心から約2万7000光年の距離にあります。Image Credit: NAOJ

ビッグバンの直後、宇宙にはほぼ水素とヘリウムなどの軽い元素しか存在していませんでした。ビッグバンから時が経ち、やがて誕生した星々が進化する過程で、炭素や酸素、ケイ素や鉄など、より重い元素が作られていきました。星が生まれ変わる中で、それらの想い元素は銀河の中で増えていきます。そのような銀河における元素の循環は「銀河化学進化」と呼ばれています。

太陽系の重元素の量は、周辺にある太陽と同じ年代の星々とくらべると異なっています。一方で、天の川銀河では中心に近いところと外側とで元素の量に違いがあります。そのことから、太陽系は銀河系の中心に近いところで生まれたのちに、現在の位置まで移動してきたのではないかと考えられています。

天の川銀河の化学進化の理論モデル(左)と、銀河系中心からのさまざまな距離における重元素(鉄と水素の割合)の時間変化のようす(右)。Image Credit: 鹿児島大学
天の川銀河の化学進化の理論モデル(左)と、銀河系中心からのさまざまな距離における重元素(鉄と水素の割合)の時間変化のようす(右)。Image Credit: 鹿児島大学

鹿児島大学の馬場淳一氏らの研究チームは、恒星の進化過程を考慮した銀河の化学進化モデルを作り、約46億年前に太陽系の重元素の組成と同じ組成になる場所を調べました。その結果、天の川銀河の中心から約1万6000光年のところが、それに該当することが示されました。太陽系が1万光年ほど内側で誕生した可能性が浮かび上がったのです。

ただ約46億年の間にどのような経路をたどり、いつの時点で現在の位置まで到達したのか、また移動を始めるきっかけはなんだったのかといった新たな疑問も生じています。太陽系の大移動には、天の川銀河の渦状腕構造や棒状構造の性質が密接に関わっていると研究チームは考えています。今後、天の川銀河の詳しい構造や成り立ちが明らかになることで、太陽系の大移動についての疑問に対する手がかりが得られることが期待されるとしています。

(参照)鹿児島大学神戸大学国立天文台科学研究部