天の川銀河を周回する星の集団が新たに発見されました。これまで発見された天の川銀河の衛星天体の中で最も暗く、最も質量の小さなものです。
「おおぐま座III/UNIONS 1(Uma3/U1)」と呼ばれるその天体は、おおぐま座の方向、地球から約3万光年離れたところにあります。きわめて暗いため、これまで見つかっていませんでした。
10光年の範囲に60個ほどの星が存在
Uma3/U1は100億歳を超える60個ほどの星が、直径がわずか10光年の範囲に存在しています。質量は太陽の16倍で、最も暗いとみられる矮小銀河の15分の1ほどしかありません。
ビクトリア大学とイェール大学が率いる研究チームはまず、紫外近赤外可視光北天サーベイ(Ultraviolet Near Infrared Optical Northern Survey[UNIONS])のデータから、Uma3/U1をまず検出しました。UNIONSは、ハワイ島のマウナケア山頂付近にあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)、すばる望遠鏡と、マウイ島のハレアカラ山頂付近にあるパンスターズ(Pan-STARRS)望遠鏡によるプロジェクトです。Uma3/U1の検出にはCFHTとパンスターズのデータが使われました。
研究チームはその後、マウナケア山頂付近にあるケック天文台の分光器を使って、より詳細な研究を行なった結果、UMa3/U1が重力的にまとまっている星系、つまり矮小銀河あるいは星団であることを確認しました。分光観測の結果は、すべての星が同じような速度で移動し、同じような化学的性質を持っていることを示していたとのことです。
UMa3/U1のような小さな星の集団の場合、天の川銀河円盤からの強い潮汐力によってすぐに引き裂かれてしまう可能性があります。しかし星系が無傷であるように見えることは、UMa3/U1が大量の暗黒物質によって安定している小さな銀河である可能性がある一方、崩壊の最終段階の一時期をたまたま私たちが目撃しているだけである可能性もあります。
ちなみに、非常に淡い衛星銀河は通常、発見された星座(今回の天体の場合はおおぐま座)にちなんで名付けられます。一方で非常に淡い星団は通常、調査プロジェクト(今回の場合はUNIONS)にちなんで名付けられます。今回発見された天体は現状、両者を併記する形で呼ばれています。