X線観測で天の川銀河の南にも巨大な泡構造を発見!

eROSITAによる全天画像。0.3〜0.6keVのエネルギーのX線を赤、0.6〜1keVを緑、1〜2.3keVを青に色付けして合成されています。Credit: MPE/IKI
eROSITAによる全天画像。0.3〜0.6keVのエネルギーのX線を赤、0.6〜1keVを緑、1〜2.3keVを青に色付けして合成されています。Credit: MPE/IKI
こちらの全天マップでは0.6〜1keVのX線が強調されており、南側の泡状構造の存在が分かります。点光源は取り除かれています。Credit: MPE/IKI
こちらの全天マップでは0.6〜1keVのX線が強調されており、南側の泡状構造の存在が分かります。点光源は取り除かれています。Credit: MPE/IKI

ドイツのX線望遠鏡eROSITAの観測によって、天の川銀河の上下方向に一対の巨大な泡状の構造が見つかりました。eROSITAは、ロシアとドイツの共同ミッションであるSRG(Spectrum Roentgen Gamma)衛星に搭載された望遠鏡です。

天の川銀河の北側にある「ノース・ポーラー・スパー(North Polar Spur、北極スパー)」と呼ばれる泡状の構造は、以前から存在が知られていました(画像にも映っています)。今回eROSITAによって南側にも巨大な泡状構造があることが分かったのです。ノース・ポーラー・スパーは太陽系の比較的近くで起きた超新星爆発の痕跡ではないかとも考えられてきましたが、南側の泡状構造とあわせて考えると、天の川銀河の中心で発生した現象に起因すると見られるとのことです。

天の川銀河の上下方向には、「フェルミバブル」と呼ばれる泡状の構造が存在しています。これはNASA(アメリカ航空宇宙局)のフェルミ衛星が2010年にガンマ線で発見したものです。eROSITAがX線で発見した泡状の構造はフェルミバブルよりも巨大で、銀河平面の上下、最大5万光年にわたって広がっています。天の川銀河の上下方向では、X線で見えるバブル(eROSITAバブル)とガンマ線で見えるバブル(フェルミバブル)とが入れ子になっているのです。

これらの泡状構造は、数千万年前に銀河系中心から放出された莫大なエネルギーによってできたのではないかと考えられています。そのエネルギーは銀河系中心の巨大ブラックホール、あるいは銀河系中心で起きた爆発的な星形成によって発生したものかもしれません。いずれにしてもそのエネルギーは、超新星10万個分のエネルギーに相当すると見られています。

eROSITAはX線で全天を観測する望遠鏡です。銀河系の南側にある泡状の構造は、全8回が予定されているうちの1回目の全天観測によって見つかりました。今後の観測により、より多くの情報を収集していくことになります。

(参照)Max Planck InstituteDLR