2022年9月26日、NASA(アメリカ航空宇宙局)のDART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験機)が小惑星ディモルフォスに衝突し、小惑星の軌道を変えることに成功しました。ディモルフォスは、より大きな小惑星であるディディモスのまわりを公転する小惑星です。直径151mのそのディモルフォスに、DARTは秒速約6.1kmの速度で衝突し、小惑星の公転周期を30分以上短くしたのです。
DARTの衝突により、ディモルフォスからは噴出物が宇宙空間へ放出されました。ミラノ工科大学のEloy Peña-Asensio氏らの研究によると、その噴出物が地球や火星に到達する可能性のあることが示唆されています。
数年〜10数年で火星や地球に噴出物が到達か
研究チームは、10cm、0.5cm、30μmという3つのサイズにグループ分けした300万個の粒子を使い、実際の観測と一致するようにシミュレーションを実施。それらの粒子は秒速1〜1000mの速度、最大で秒速2kmで移動します。
シミュレーションの結果、秒速約450mで噴出した場合、粒子が13年で火星の重力場に到達する可能性があることが示されました。また秒速770mで飛び出したより速い噴出物は、わずか7年で火星付近に到達する可能性があるとのことです。また秒速1.5km以上で移動する粒子は、似たようなタイムスケールで地球-月系に到達する可能性があります。
南半球で5月にみられる可能性が高い!?
噴出した破片のうち最大のものはソフトボール程度の大きさがあります。そのサイズの場合、地球では大気中で燃え尽きてしまいますが、大気の薄い火星では表面まで到達する可能性があります。
DARTの衝突によって生じた破片が地球に到達すると、新たな流星群を生み出す可能性があります。地球に到達する可能性が高いのは、高速で飛び出した小さな粒子だけだとみられます。ただ、そのような粒子が流星を生み出すほどの大きさがあるかどうかは不明とのことです。DARTによって生成される可能性のある流星は動きが遅く、主に南半球で5月に発生する可能性が最も高いとしています。
なお2024年10月には、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の探査機ヘラ(HERA)が、ディディモスとディモルフォスのペアに向けて打ち上げられる予定になっています。2026年後半に到着予定で、DARTが衝突した場所などを詳細に調べる予定です。
(参考記事)探査機DART、小惑星への衝突成功!
(参照)ESA