これまで知られている中で、太陽を周回する公転周期が最も短い小惑星「2021 PH27」が発見されました。小惑星以外を含めると、水星に次いで太陽系で2番目に公転周期の短い天体です。
2021 PH27は直径約1kmの小惑星で、113日で太陽を1周しています。太陽に近づくときは約2000万kmまで接近します。最も内側の惑星である水星の太陽からの平均距離が約5790万kmですから、2021 PH27は水星軌道よりかなり内側まで太陽に近づくことになります。最接近時には表面温度が500℃ほどになるとのことです。これは鉛も溶けてしまうほどの温度です。ただ2021 PH27の公転軌道は細長い楕円で、太陽から離れるときは金星の公転軌道を超えて遠ざかります(金星の太陽からの平均距離は約1億820万km)。
2021 PH27は、火星と木星の間にある小惑星帯から移動してきたのかもしれません。ただ軌道傾斜角が32度と大きいことから、太陽系の外縁部からやってきた可能性もあるようです。2021 PH27の起源については、今後の観測が待たれます。
2021 PH27は太陽の巨大な重力場に近いため、一般相対性理論的効果を強く受けています。これは時間の経過とともに小惑星の公転軌道にわずかな角度のずれが生じる「歳差運動」と呼ばれるもので、100年間で約1cmの割合で発生します。かつて水星の歳差運動はニュートン力学だけでは説明がつかず科学者を悩ませましたが、アインシュタインの一般相対性理論によって説明が可能になりました。2021 PH27の歳差運動は、水星よりもさらに速いものです。
2021 PH27は、5億2000万画素のダークエネルギーカメラ(DECam)で2021年8月13日に撮影されたデータから発見されました。このカメラは、南米チリのセロ・トロロ汎米天文台(CTIO)にあるブランコ4m望遠鏡に搭載されている装置です。その後、ほかの望遠鏡でも2021 PH27の観測が行われて確認されました。