火星の南極の地下で見つかった「液体の水」の正体は「粘土」だった?

この画像は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)が撮影した、火星の南極にある氷床です。MROによる観測で、この氷床付近から粘土鉱物が検出されました。

2018年、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスによるレーダー観測から、火星の南極の地下に液体の水が存在するのではないかとする研究が発表され、大きな話題になりました。

アメリカ、アリゾナ州立大学のAditya Khuller氏やJPL(ジェット推進研究所)のJeffrey Plaut氏らが発表した最近の研究によれば、マーズ・エクスプレスのデータを分析したところ、液体の水によると解釈されたレーダー反射と同様のものが、火星の南極周辺で数十個発見されました。ただしそれらの多くは、水が液体のまま存在するには寒すぎる場所で見つかりました。水の凍結温度を下げるはずの塩を混ぜたとしても凍ってしまうほどの場所でした。

アリゾナ州立大学のCarver Bierson氏らは、そのレーダー反射を地下の粘土や金属を含む鉱物、あるいは塩分を含んだ氷が原因である可能性を指摘する理論的な研究を行いました。

またイギリス、ヨーク大学のIsaac Smith氏らは、レーダー反射の正体はスメクタイトという粘土鉱物ではないかとする研究を発表しました。液体窒素でマイナス50℃まで凍らせたスメクタイトのサンプルが、火星でのレーダー観測の結果とほぼ一致することを確認しました。またMROのデータから、火星の南極付近にスメクタイトが散在していることを発見したのです。

「惑星科学においては、私たちはしばしば、ほんの少しずつ真実へと近づいていきます」とPlaut氏は言います。「元の論文が水であることを証明したわけではありませんし、最近の3つの論文が水でないことを証明したわけでもありません。しかし私たちは、コンセンサスを得るためにできる限り可能性を狭めようとしているのです」

(参照)Mars Exploration Program(1)(2)Arizona State UniversityCornell University