
この画像を一見すると、星々が輝くスクリーンの一部が破れ、奥にある異世界が見えているかのような錯覚を覚えます。ただ実際には、暗い領域はガスと塵が密集して奥にある天体からの光をさえぎることで暗く見えています。
画像に映っているのは、地球から約2500光年の距離にある「コンパス座分子雲」の西側の領域です。その直径は180光年、質量は太陽の25万倍に及びます。分子雲とは、水素が主に分子の状態で存在するガス雲のことで、星々のゆりかごでもあります。
画像に映る暗い領域には、形成の初期段階にある星々が多数存在していることが知られています。暗黒星雲の中で、形成中の星から発せられた光や、点状の若い星々が明るく見えています。形成中の星からはジェットが噴き出しており、そのジェットによって周囲のガスが削り取られて空洞になっています。

またここでは、ハービッグ・ハロー(HH)天体も見えています。若い星から高速で放出されたガスが、周囲の星間物質中の低速のガスと衝突することで形成される天体です。この画像は、ハービッグ・ハロー天体の一つ「HH 139」のクローズアップ。冒頭の画像の中央やや左付近を拡大したものです。
画像は、南米チリにあるセロ・トロロ汎米天文台(CTIO)のビクター・M・ブランコ4m望遠鏡に搭載されたダークエネルギーカメラ(DECam)で撮影されました。DECamは、5億7000万画素の巨大なデジタルカメラです。
画像は、NSF(アメリカ国立科学財団)のNOIRLab(アメリカ光学・赤外天文学研究所)から2025年4月29日に公開されました。
Credit:
CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA
Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), D. de Martin & M. Kosari (NSF NOIRLab)
(参照)NOIRLab