銀河団Abell 1775に見られた巨大ジェットや、銀河団衝突でできた「尾」 | アストロピクス

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銀河団Abell 1775に見られた巨大ジェットや、銀河団衝突でできた「尾」

この画像は、うしかい座の方向、約9億6000万光年の距離にある銀河団Abell 1775をとらえたものです。チャンドラX線望遠鏡が観測したX線(青)、ハワイにあるパンスターズ望遠鏡の可視光(青、黄、白)、オランダの電波望遠鏡LOFARの電波(赤)のデータが合成されています。

Abell 1775は、かつて2つの銀河団が衝突してできたと見られています。大きさの異なる2つの銀河団が衝突すると、小さい方の銀河団は大きな銀河団の中を進んでいくことになります。小さい銀河団が通過する際、摩擦のために高温ガスは引き剥がされます。そのため銀河団の後方に尾が残っていきます。画像には、その尾がカーブを描いているのが映っています。また「コールドフロント」と呼ばれる、高密度で低温の湾曲したガスの境界領域も映っています。

Abell 1775には巨大なジェットと電波源があることも知られており、冒頭の合成画像にもそれが映っています。ジェットは、銀河団の中心にある巨大な楕円銀河に存在する超巨大ブラックホールによって生み出されています。

LOFARおよびインドの巨大メートル波電波望遠鏡(GMRT)のデータから、この電波ジェットの長さが260万光年であることが明らかになりました。これは従来考えられていたよりも約2倍の長さで、銀河団で観測されたジェットとしてはこれまでで最長のものの1つです。画像には、コールドフロントを超えたところでジェットの構造が急激に変化しているのが映っており、これは銀河団の衝突の影響を受けていることを示唆しているとのことです。

ただしAbell 1775のようすを説明する説はもう1つ別のものもあります。どちらの説も2つの銀河団が衝突するというシナリオですが、どちらのシナリオが正しいかを決めるには、さらなる観測とモデル化が必要になります。

Image Credit: X-ray: NASA/CXC/Leiden Univ./A. Botteon et al.; Radio: LOFAR/ASTRON; Optical/IR:PanSTARRS

(参照)Chandra X-ray Observatory