東京大学の柏川伸成教授らの研究グループは、おおぐま座にある「GN-z11」という銀河が134億光年彼方にあることを確定しました。これまで観測された銀河の中で最も遠い距離です。GN-z11はハッブル宇宙望遠鏡によって発見された銀河で、おそらく134億光年の距離にあると推測されていましたが、正確な距離は測定されていませんでした。
宇宙は膨張しています。遠方の天体から出た光(電磁波)は、地球に届くまでの間に宇宙空間が膨張しているために光の波長が伸びて長くなります。この現象は波長が伸びて赤い方へずれることから「赤方偏移」と呼ばれます。赤方偏移は、遠方の天体ほど大きくなります。
研究グループは、ハワイ、マウナケア山頂にあるケック望遠鏡の近赤外線分光器MOSFIREを用いてGN-z11の観測を行い、炭素イオンと酸素イオンが放つ光を検出することに成功しました。それらの光から10.957という赤方偏移が得られ、GN-z11が134億光年にあることが明らかになったのです。
宇宙誕生時のビッグバン直後には、宇宙には水素やヘリウムなどの軽い元素しか存在していませんでした。やがてそれらの軽い元素が集まって第1世代の星や銀河が形成されます。星の中心部での核融合反応などによって、炭素や酸素など重い元素(天文学ではこのような重い元素を「金属」と呼びます)が作られました。
「炭素と酸素が GN-z11 に見つかったということは、この銀河が、金属を含まない、宇宙で最初に生まれた銀河ではない、ということを示しています」柏川教授。2021年にはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられる予定になっており、宇宙最遠方のフロンティアは飛躍的に広がることが期待されています。