ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたこの画像の右上、明るいところから一対の影が伸びているのが見えます。「HBC 672」という星の周囲にあるガスと塵の円盤が星からの光をさえぎり、遠方にある星雲に巨大な影を落としているのです。HBC 672は年齢100万〜200万歳の若い星です。
この一対の影は、羽のようにも見えることから「コウモリの影」という愛称で呼ばれていました。今回、宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の天文学者Klaus Pontoppidan氏らの観測によって、その影が動いており、まるで羽ばたいているように見えることが発見されました。13か月にわたり複数のフィルターでこの影を観測し、以前撮影されていた画像と重ねてみたところ、影が動いているのが分かったのです。
この動画は、影が動いていることを示しています。(Credit:
ESA/Hubble, K. Pontoppidan, L. Calçada, M. Kornmesser、Music: Konstantino Polizois)
このような“羽ばたき”が起きるのは、星の周囲の円盤が、この動画(Credit:ESA/Hubble, L. Calçada、Music: Konstantino Polizois)のように馬の鞍(くら)のような形をしているからではないかとみられています。円盤の中にある惑星の軌道が傾いており、それにより円盤が鞍形にゆがむことで影が動いているのではないかと研究チームでは推測しています。またその惑星は、太陽〜地球間と同じくらいの距離のところを180日以上かけて公転していると推定されています。
影の動きの原因が、円盤の外にある低質量の伴星による可能性もあるようですが、研究チームではその可能性は低いとみています。伴星の存在を示す証拠も今のところありません。
Image Credit: NASA, ESA, and STScI