太陽系外からやってきて、2019年に太陽に近づいた恒星間天体ボリソフ彗星(2I/Borisov)に、アルマ望遠鏡が向けられました。
アルマ望遠鏡による観測で、ボリソフ彗星から放出されたガスの中に、シアン化水素(HCN)と一酸化炭素の2種類の分子が検出されました。上の画像は、ボリソフ彗星から放出されたシアン化水素(左)と一酸化炭素(右)をアルマ望遠鏡がとらえたものです。
水分子に対するシアン化水素と一酸化炭素の含有量を調べたところ、太陽系の彗星と比べてシアン化水素は同じ程度でしたが、一酸化炭素はかなり大量に含まれていることが分かりました。
ボリソフ彗星から放出されたガスには、太陽から2天文単位(約3億km)以内で発見された太陽系のどの彗星よりも一酸化炭素が多く含まれていました。ボリソフ彗星に含まれる一酸化炭素の量は、太陽系の平均的な彗星の9〜26倍に及ぶと推定されています。ボリソフ彗星は、マイナス250℃というとても低温な環境にだけ存在する、一酸化炭素の氷が豊富な物質から形成されたとみられています。
一酸化炭素は、宇宙で最もありふれた分子の一つで、ほとんどの彗星で発見されています。ただ、彗星中の一酸化炭素の量には大きなばらつきがあり、その理由は分かっていません。このことは、彗星が形成された場所に関係しているかもしれません。彗星が太陽に近づくと揮発性の高い物質から失われていくため、彗星の組成は太陽に近づく頻度とも関係します。
観測されたガスがボリソフ彗星の形成場所の組成を反映しているとすれば、惑星系外縁部の極端に低温な領域において、太陽系の彗星とは異なる方法で形成されたことを示唆しています。そのような領域は、太陽系では海王星以遠で氷天体がたくさん存在する「カイパーベルト」と呼ばれる領域に相当します。
一酸化炭素の量が多い性質が恒星間天体に一般的なことなのか、あるいはボリソフ彗星が特殊なケースなのかについては、今回の観測からだけでは分かりません。今後も恒星間彗星が観測され、ボリソフ彗星と比較することができるようになれば、そのようなことも理解が進むかもしれません。
https://public.nrao.edu/news/alma-reveals-unusual-composition-of-interstellar-comet-2i-borisov/