2008年、みなみのうお座の1等星、フォーマルハウトのまわりに存在する系外惑星が、ハッブル宇宙望遠鏡によって直接撮像されたとして大きな話題になりました。ただ、「フォーマルハウトb」と呼ばれるその天体が本当に惑星なのかどうかについては議論が続いてきました。
ハッブル宇宙望遠鏡の最新の観測によると、そのフォーマルハウトbが消えてしまったようです。観測を行なった研究チームでは、惑星サイズの天体はそもそも存在していなかったのではないかと考えています。
2014年にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像では、フォーマルハウトbは見えなくなっていました。またこれまで撮影された画像からは、天体が時間の経過とともに徐々に消えていくようすが確認されました。研究チームではこの現象を、天体どうしの衝突によって吹き飛ばされた塵の雲がゆっくりと広がってきたものだと解釈しています。この塵の雲は現在までに、太陽系でいえば地球の公転軌道よりも大きく広がっていると推定されています。
冒頭の画像は、左がハッブル宇宙望遠鏡がとらえたフォーマルハウトのまわりのリング、右が広がって消えていく塵の雲のようすをシミュレーションしたものです。
フォーマルハウトbは、フォーマルハウトを取り巻く氷の破片からなる広大なリングの中に存在しています。そのため衝突した天体は、太陽系の外縁部にあるエッジワース・カイパーベルトに存在する彗星のように、氷と塵が混じったものである可能性が高いとみられています。それらの彗星の核のような天体は、それぞれ200kmほどの大きさだったと推定されています。フォーマルハウト星系では、そのような衝突は20万年に1度の頻度で発生する可能性があることも示唆されています。
Image Credit: NASA, ESA, and A. Gáspár and G. Rieke (University of Arizona)