ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた蝶のような惑星状星雲 35 Years of Hubble Images(Year 31) | アストロピクス

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた蝶のような惑星状星雲 35 Years of Hubble Images(Year 31)

この画像は、ハッブル宇宙望遠鏡が惑星状星雲NGC 6302をとらえたものです。さそり座の方向、2500〜3800光年の距離にあるNGC 6302は、翅を広げた蝶のように見えることから「バタフライ星雲」とも呼ばれています。

ハッブル宇宙望遠鏡は1990年4月24日に打ち上げられました。NASA(アメリカ航空宇宙局)はハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ35周年(2025年4月24日)に向けて、これまでハッブルが撮影してきた画像から、「35 Years of Hubble Images」と題して各年1枚ずつ選んで紹介しています。バタフライ星雲をとらえたこの画像は31年目の画像として紹介されています。

惑星状星雲は、太陽程度の質量の星の晩年の姿です。年老いて膨らみ赤色巨星となった後、星の外層のガスが宇宙空間へ放出され広がっていきます。中心に残された星の「芯」からの紫外線によって、放出されたガスが電離して輝くのが惑星状星雲です。

NGC 6302の「翅」は2万℃以上に加熱されたガスで、時速約96万km以上の速度で広がっています。「翅」の部分で、右上から左下にかけて赤みを帯びたS字状の領域が見られます。それは電離した鉄からの近赤外線放射で、中心の星から比較的最近に放出されたガスの痕跡である可能性が高いとみられています。そのガスは、それ以前に放出された物質よりもはるかに速いスピードで移動しています。

画像はハッブル望遠鏡のWFC3(広視野カメラ3)で2019年と2020年に撮影され、2020年6月に公開されたものです。

なおハッブル宇宙望遠鏡がNGC 6302を撮影した画像は、今回紹介したもの以前にも公開されたことがあります。(参考)翅を広げた蝶のような惑星状星雲NGC 6302

(参考)「35 Years of Hubble Images」記事一覧

Image Credit: NASA, ESA, Joel Kastner (RIT)

(参照)NASA(1)(2)