この画像には不思議な形の天体が映っています。彗星のようにも見えるかもしれません。実はこの画像は、オリオン星雲にある「177-341 W」と呼ばれる若い恒星をとらえたものです。
若い恒星は、惑星の材料となるガスと塵の円盤に取り囲まれています。非常に明るい大質量星が近くにあると、その星からの光が若い星の円盤を加熱し、円盤の物質の一部をはぎ取ります。
177-341 Wの円盤の物質をはぎ取っている大質量星は、右上の方向の枠外にあります。177-341 Wの右上部分に黄色く明るい弓状の構造がみられますが、これは大質量星からの放射が177-341 Wのガス円盤に衝突したことで生じたものです。はぎ取られて引きずり出された円盤の物質が、177-341 Wの左下側に「尾」のように伸びています。
177-341 Wのような天体は、「プロプリッド(proplyd、原始惑星体)」と呼ばれます。オリオン星雲では、プロプリッドがたくさん見つかっています。
画像は、南米チリにあるESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)に設置されたMUSEという観測装置で撮影されました。
こちらはVLTのMUSEで撮影した177-341 Wの画像と、ハッブル宇宙望遠鏡が同じ天体を撮影した画像を比較したものです(右の画像の枠内)。大気の揺らぎを補正する補償光学システムにより、VLTの画像はハッブル宇宙望遠鏡を凌駕し、これまでで最も鮮明な177-341 Wの画像になっています。
冒頭の画像は2024年6月3日に、ESOの「今週の1枚(Picture of the Week)」として公開されました。
Image Creidt: ESO/M. L. Aru et al.
(参照)ESO