ユークリッド宇宙望遠鏡の視力が回復 鏡に付着した氷の除去に成功

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のユークリッド宇宙望遠鏡は、全天の3分の1の領域について、100億光年先までの銀河の形状や位置、距離を測定し、宇宙の3Dマップを作成することを目指しています。それによりダークマターやダークエネルギーの謎に迫ることが主な目的です。ユークリッド宇宙望遠鏡は2023年7月に打ち上げられ、11月には最初の画像が公開されていました。

ただ打ち上げから時間が経つにつれて、天体から測定される光の量が、ごくわずかではあるものの徐々に減少していることがわかりました。望遠鏡が宇宙空間に到達した後に、地上での製造中に吸収された水分が放出され、氷となって鏡に付着したために光の量の減少が生じたと考えられました。氷の厚さはわずか数ナノメートル〜数十ナノメートルとみられています。

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鏡を温めて氷を除去

氷を除去するための最も簡単な方法としては、望遠鏡全体を温めることです。ただ加熱をすると材料が膨張するため、再び冷却した後で正確に同じ状態に戻るとは限らず、調整済みの望遠鏡の光学系がずれてしまう可能性が出てきます。そこでミッションチームは、光学系の鏡を一つずつ、あるいはグループごとに温め、その都度、入ってくる光への影響をテストすることにしました。

ミッションチームが「第一の容疑者」と見立てたのは、望遠鏡の主光学系の後ろにある最も低温の鏡でした。その鏡をマイナス147℃からマイナス113℃まで加熱。氷を取り除くために温度を上げるといっても、高温にするわけではありません。真空中ではその温度で全ての氷が昇華するのに十分なのです。結果的に、宇宙から15%多くの光を受け取るようになりました。

今後も氷によってユークリッド望遠鏡の視界が曇ることが予想されています。しかし今回行われた、選択的に鏡を温める手順を6〜12か月ごとに繰り返すことは簡単で、科学観測などにはほとんど負担をかけずにすむとのことです。

(参考記事)ユークリッド宇宙望遠鏡 銀河の精密な3Dマップを作り宇宙の「暗黒」の解明を目指す

(参考記事)
ユークリッド宇宙望遠鏡がとらえた「馬頭星雲」周辺
ユークリッド宇宙望遠鏡がとらえた「隠された銀河」IC 342
ユークリッド宇宙望遠鏡がとらえた球状星団NGC 6397
ユークリッド望遠鏡がとらえたペルセウス座銀河団

Image Credit: ESA. Acknowledgement: Work performed by ATG under contract for ESA., CC BY-SA 3.0 IGO

(参照)ESA(1)(2)