故郷は矮小銀河!? 銀河系中心付近の星「S0-6」は100億年の旅の末に到達か

すばる望遠鏡で撮影した天の川銀河の中心領域(約3秒角四方)。S0-6は、超巨大ブラックホール「いて座A*」から約0.3秒角離れた位置にあります。Image Credit: 宮城教育大学/国立天文台
すばる望遠鏡で撮影した天の川銀河の中心領域(約3秒角四方)。S0-6は、超巨大ブラックホール「いて座A*」から約0.3秒角離れた位置にあります。Image Credit: 宮城教育大学/国立天文台

天の川銀河(銀河系)の中心に存在する超巨大ブラックホールの近くにある星「S0-6」をすばる望遠鏡で観測した結果、S0-6が100億歳以上の年齢であり、天の川銀河の近くにかつて存在していた矮小銀河で生まれた可能性が高いことがわかりました。

天の川銀河の中心には、太陽の400万倍の質量をもつ超巨大ブラックホール「いて座A*」が存在しています。巨大ブラックホールの近くでは強い重力がはたらくため、星の材料となるガスや塵が集まることができず、星は形成されにくいとみられています。しかし実際には、いて座A*を周回する星がいくつも見つかっています。

その謎を解くべく、宮城教育大学などの研究チームはS0-6を調査しました。データを収集するため、8年間にわたり合計10回の観測が行われました。

スポンサーリンク

S0-6の年齢は100億歳以上。元素の比が小さな銀河の星と似ていた

研究チームはまず、2014年から2021年にかけてS0-6の運動を測定し、S0-6が巨大ブラックホールの強い重力を受けている、つまりS0-6が実際にブラックホールの近くにあることを確認しました。

次に研究チームは、S0-6の年齢を調べました。S0-6の明るさや温度、星に含まれる鉄の量などの観測値を理論モデルと比較したところ、S0-6が100億歳以上の年齢の星だということが判明しました。

さらに研究チームは、S0-6に含まれる元素の量を調査しました。その結果、S0-6に含まれる元素の比が、小マゼラン銀河や、いて座矮小銀河といった、天の川銀河の近くにある小さな銀河の星とよく似ていることがわかりました。S0-6が誕生した場所が、かつて天の川銀河を周回していた小さな銀河である可能性が高いことがわかったのです。

それが正しいとすると、矮小銀河で生まれたS0-6は、100億年以上かけて天の川銀河の中心まで旅してきたことになります。一方で、S0-6が天の川銀河内で生まれた可能性もゼロではないとのことです。

研究チームは、すばる望遠鏡の視力をよりよくする装置を開発し、2024年にはその装置を使ってS0-6をより詳しく調べ、またいて座A*の近くにある他の星も調べる予定です。「S0-6は本当に天の川銀河の外で生まれたのか。仲間はいるのか、それとも一人旅だったのか。さらなる調査で、巨大ブラックホールの近くにある星の謎を解き明かしたいと思います」と、研究チームを率いる宮城教育大学の西山正吾氏は語っています。

(参照)すばる望遠鏡国立天文台