ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスは、2003年6月2日に打ち上げられてから20周年を迎えました。マーズ・エクスプレスは現在も火星を周回しながら観測を続けています。
マーズ・エクスプレスの打ち上げ20周年を記念して、ESAでは火星からでは史上初となるライブストリーミングを、6月3日午前1時(日本時間)から1時間にわたり行うことにしています。マーズ・エクスプレスに搭載されているモニタリング用カメラVMC(Visual Monitoring Camera)で撮影した画像が50秒ごとに送られてくる予定です。ライブストリーミングはESAのYoutubeチャンネルで視聴できます。
深宇宙からの長時間のライブストリーミングは史上初
探査機のデータは通常、機内に保存しておいて通信可能な状況の時に地球へ送られます。VMCの場合は、数日ごとにデータがダウンリンクされています。「ライブ」画像を送信する例は非常に珍しいことです。
これまでにも、小惑星ディモルフォスに衝突したNASA(アメリカ航空宇宙局)のDARTミッションや、月の南極に衝突させたNASAのLCROSSミッションなどで「ライブ」画像が送られてきたことがあります。またアポロ計画では宇宙飛行士が月面を歩く姿を映したライブ映像が送られてきました。
これらはいずれも地球から比較的近いところで行われたものです。一方、土星系を観測したカッシーニミッションでも1〜2枚の画像がほぼリアルタイムで送られてきたことはあります。ただ深宇宙から長時間にわたるライブストリーミングは、今回が初めてのことになります。
火星と地球との間の通信にかかる時間は、位置関係によって変わります。ESAによれば今回、火星周回軌道上で撮影された画像が画面に表示されるまでには約18分かかります。電波が火星から地球に届くまでに17分、地上のサーバーなどを経由するのに約1分かかるとのことです。
VMCはどんなカメラ?
マーズ・エクスプレスには、着陸機ビーグル2が搭載されていました。VMCはもともと、2003年に行われたビーグル2の分離を監視するためのカメラでした(ビーグル2の着陸は失敗)。任務の完了後は電源がオフにされていましたが、2007年に再び電源が入れられ、アウトリーチ活動のほか、科学観測にも利用されてきました。(参考記事)火星用「ウェブカメラ」がとらえた様々な火星の姿、火星の巨大火山の山頂付近から1000km以上も伸びる白い雲
Image Credit: ESA
(参照)ESA