ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測により、土星の衛星エンケラドスから噴出している水蒸気などからなるプルームが、エンケラドスの大きさの20倍ほどの範囲にまで広がっていることが判明しました。
土星の衛星エンケラドスの南極付近からは、水蒸気や氷の粒子などが噴出しています。2017年に観測を終えたカッシーニ探査機は、エンケラドスから噴出するプルーム(間欠泉)を初めて撮影し、さらにそのサンプルを採取して分析を行いました。
直径505kmのエンケラドスの表面は氷の地殻に覆われており、地下には全球規模の海が存在していると考えられています。地下の海には生命が存在している可能性もあり、大きな注目を集めています。エンケラドスの南極付近には「タイガーストライプ」と呼ばれる複数の亀裂があり、地下海の水が水蒸気などになってタイガーストライプから噴出しています。
毎秒300kgもの水蒸気が噴出
この画像はウェッブ望遠鏡のNIRSpec(近赤外線分光器)で2022年11月9日に撮影されたものです。水蒸気のプルームが広がっているのが映し出されています。左上はカッシーニ探査機がとらえたエンケラドスで、南極付近から噴き出すプルームがかすかに見えています。
ウェッブ望遠鏡の観測により、プルームが9600km以上に及んでいることが判明しました。また毎秒約300kgもの水蒸気が噴出していることもわかりました。これはオリンピックサイズのプールが数時間で満杯になるほどの量です。
エンケラドスは33時間で土星を周回しています。水蒸気などを噴出しながら周回しているため、エンケラドスの公転軌道に沿って、水蒸気がトーラス(ドーナツ)状に分布した領域が残されています。この水蒸気のトーラスは、土星のいちばん外側のEリングを同じ位置にあります。(参考記事)土星のリング
ウェッブ望遠鏡のデータの分析から、水の約30%がトーラス内にとどまり、残りの70%が流出して土星系の他の部分に水を供給していることもわかったとのことです。
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, G. Villanueva (NASA’s Goddard Space Flight Center), A. Pagan (STScI)