MUSEが明らかにした近傍銀河の新たな星々とガスの分布(2)

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)に搭載された超広視野面分光装置MUSEで撮影された5つの銀河の写真を、2回に分けて紹介する記事の第2弾です。これらの銀河の画像は2021年7月16日に公開されました。

前回の記事では、MUSEで撮影された銀河の画像を紹介しましたが、今回紹介するのは、MUSEに加えアルマ望遠鏡のデータも組み合わせたものです。なお5つの銀河は前回の記事と同じ天体です。

こちらは、おとめ座の方向、約5500万光年の距離にある棒渦巻銀河NGC 4303(M61)です。NGC 4303については、VLTで撮影された画像や、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した中心部の画像をアストロピクスで紹介したことがあります。

こちらは、かみのけ座の方向、約4500万光年の距離にあるグランドデザイン渦巻銀河NGC 4254です。NGC 4254については、VLTを使い可視光で撮影された画像をアストロピクスで紹介したことがあります。

こちらは、しし座の方向、約3100万光年の距離にある渦巻銀河NGC 3627です。

こちらは、くじら座の方向、約8000万光年の距離にある渦巻銀河NGC 1087です。

こちらは、エリダヌス座の方向、約6100万光年の距離にある棒渦巻銀河NGC 1300です。NGC 1300については、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された画像をアストロピクスで紹介したことがあります。

これらの画像は、星の集団や温かいガスをマッピングするために異なる波長の光で行われた観測結果を重ね合わせたものです。アルマ望遠鏡のデータは茶色がかったオレンジ色で表現され、星の材料となる冷たいガス雲を示しています。MUSEのデータは金色と青で示されています。金色の輝きは主に電離した水素、酸素、硫黄ガスの雲で、新しく生まれた星々の存在を示しています。背景の青っぽい領域は、やや古い星々の分布を示しています。

これらの画像は「PHANGS(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS:近傍銀河の高解像度観測による物理学研究)」というプロジェクトの一環で撮影されたものです。星はガス雲の中で生まれます。ただ何がきっかけで星形成が始まるのか、また銀河全体がどのように関与しているのかは、まだ分かっていません。そのプロセスを理解するため、地上と宇宙にある強力な望遠鏡を使い、比較的近距離にあるさまざまな銀河が観測され、銀河の中で星形成に関わるさまざまな領域が調べられました。

PHANGSではMUSEによる観測だけでなく、アルマ望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡による観測も行われました。2021年初めにはアルマ望遠鏡による銀河の観測結果も公開されています。(参考記事)90の銀河にある10万の分子雲が調査された

Image Credit: ESO/PHANGS

(参照)ESO