探査車キュリオシティが火星で初めて純粋な硫黄を発見

NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車キュリオシティが、純粋な硫黄でできた岩を発見しました。キュリオシティは2023年10月以来、硫酸塩が豊富な地域を探索しています。キュリオシティは、硫酸塩のように硫黄と他の物質が結合した鉱物を検出したことはあります。しかし純粋な硫黄が発見されたのは、今回が初めてのことです。

こちらの画像は2024年6月7日(4208火星日)に、キュリオシティのマストカメラ(Mastcam)で撮影したものです。画像には黄色い硫黄の結晶が映っています。撮影の1風間ほど前の5月30日、キュリオシティがこの岩の上を通過した際に岩が割れ、中が露出しました。分光計で岩の組成を調べたところ、硫黄であることがわかったのです。

今のところ、この地域にある硫酸塩と硫黄の関係は分かっていません。地球上で硫黄は、火山活動や熱水活動など、さまざまな地質学的なプロセスで生成されます。しかしキュリオシティが発見した硫黄が、どのようなプロセスで生成されたのかは分かっていません。

こちらは硫黄の結晶のクローズアップ。キュリオシティのロボットアームの先端に設置されているMAHLI(Mars Hand Lens Imager)というカメラで6月4日に撮影されました。NASA・JPL(ジェット推進研究所)のキュリオシティプロジェクト科学者のAshwin Vasavada氏は「純粋な硫黄でできた岩の塊を見つけることは、砂漠でオアシスをみつけるようなもの」と語ります。「奇妙で予想外のものを発見することが、惑星探査を非常にエキサイティングなものにします」とVasavada氏。

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火星の「ゲディズ峡谷」で硫黄を発見

キュリオシティが硫黄を発見したのは、「ゲディズ峡谷(Gediz Vallis)」と呼ばれる場所です。ゲディズ峡谷は、キュリオシティが着陸したゲール・クレーター内の高さ5kmのアイオリス山(シャープ山)にある溝状の地形です。

こちらはキュリオシティがとらえたゲディズ峡谷の360度パノラマ画像です。6月19日(4220火星日)にマストカメラで撮影した336枚の画像を組み合わせたもの。画像の左端に探査車のロボットアームが映り、ドリルで掘削された穴も映っています。

画像の中央付近に見られる白っぽい岩が、キュリオシティが上を通過した際に割れて硫黄が露出した岩と同じ種類のものです。この岩は、この場所で形成された可能性がある一方、洪水などによって遠方から運ばれてきた可能性もあるようです。

こちらは白っぽい岩のクローズアップ。キュリオシティが6月8日(4209火星日)にMAHLIで撮影しました。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS

(参照)JPL