NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車パーサヴィアランスが、新たな観測キャンペーンをスタートします。パーサヴィアランスは着陸以来2年半にわたり、ジェゼロ・クレーターの底とデルタ地帯を探索してきました。2024年8月19日の週から、ジェゼロ・クレーターの西側の縁を登坂していくことになります。その道のりは、パーサヴィアランスがこれまで遭遇したことがないほど急峻な地形を含んでいるとのことです。
この画像はパーサヴィアランスがマストカメラ(Mastcam-Z)を使って、ジェゼロ・クレーターの縁の方向を撮影したものです。2024年8月4日(1229火星日)に撮影されました。パーサヴィアランスは、画像に映る2つの丘の間のルートを通って登っていきます。
こちらはパーサヴィアランスのルートです。背景画像にある白い線はパーサヴィアランスがこれまで通ってきたルートを示しています。背景画像左の黄色い枠の部分の拡大画像が中央下にあり、青い線で今後予定されているルートが描かれています。「Dox Castle」と名付けられた場所も訪問予定地の1つです。Dox Castleは、上のパノラマ画像の右の丘の左側、画像の撮影地点から740メートルのところにあります。
探査車の科学チームは、それぞれ「Pico Turquino」「Witch Hazel Hill」と愛称が付けられた場所をとくに調査したいと考えています。NASAの火星周回機の画像から、Pico Turquinoにはかつての熱水活動によって生じた可能性のある古代の亀裂があります。一方のWitch Hazel Hillをとらえた周回機の画像には、火星の気候が現在とは非常に異なっていた時代のものとみられる層状の物質が映っています。
クレーターの縁では、今後さらに多くの発見が期待されています。今回の観測キャンペーンの科学リーダーの1人、ハワイ大学マノア校のEleni Ravanis氏は「クレーターの縁から得られるサンプルは、火星の地質史を理解するうえで重要な意味を持つでしょう」と述べています。「それは、火星で最も古い地殻の岩石を調査する予定だからです。これらの岩は、さまざまな異なるプロセスを経て形成されたもので、一部は居住可能な古代の環境を示している可能性があります」
パーサヴィアランスはクレーターの縁の頂上まで、高さ300m分を登っていくことになります。その途中、パーサヴィアランスは最大23度の斜面を通過する予定です。
(参照)JPL